小さな断片・6 ページ16
だけど、すぐに気づく。
(…また、はぐらかされた)
太輔の優しさに、偽りはないと思う。
でも…こうやって何もかもを隠されてしまうのは…ちょっとだけ、不満ではある。オレの為を思っての行動なんだろうけれど、オレだって子供じゃないんだし。
ある程度ショッキングな事実があったとしたって、もう三年も経ったんだから。少しは…少しずつでも明かしてくれたらいいのになって、思ったり…する。
「ふふっ。わた、拗ねてるの?」
オレの顔を見た太輔が、苦笑いしながら首をかしげてくる。不満そうな顔をしてしまってたんだろう。オレが
「…べつに」
って呟くと、太輔の笑い声が大きくなった。
「可愛いね、わたは」
その言葉からは嘘を言っている雰囲気は全然感じなくて、顔がふわっと熱を持つ。そんなオレに、太輔はまたよしよしと頭を撫でてきた。
「とにかく、体調が悪いとかじゃなくて本当にホッとしたよ。毎日早く起きてご飯を作って、部屋もピカピカにしてくれて、きっと疲れが溜まってたんだね」
「いや、そんなこと…っていうかごめん!夜のごはん…!」
「いいよ。たまにはゆっくり休んで。そうだ、久々に今日は俺が作っちゃおうかな?」
「えっ。太輔が?」
「たまにはいいでしょ。これでも、わたが作ってくれるようになる前は自炊してたんだよ?」
太輔は爽やかな声で胸を張った。
太輔の料理…そう言われてみれば、オレは一回も食べた事がない。
べつに約束したわけじゃなかったけど、コーヒーを淹れるのもデザートを取り分けるのも、ご飯の準備や後片付けもオレが全部やってきてた。だから、太輔が野菜を洗ったり魚を焼いたりしてる所をオレは全く知らない。
「…そうだ。そういえばオレ、一回も太輔の料理を食べた事がなかった」
「ふふっ、任せて。ちゃっちゃっと作っちゃうから」
そう言ってワイシャツの袖を捲った太輔の横顔は、きらきらと輝いてどこか頼もしく見えた。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして!こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…!ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして!面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます! (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます!そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです!絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます(笑)ドキドキするお話をありがとうございました! (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました! (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年12月15日 20時