小さな断片・5 ページ15
「ったいすけ…！」
自分の叫び声に耳をつんざかれて、ハッと目を開ける。さっきとはうって変わって、人工的な明るい光の先に見慣れた天井があった。
ここは、部屋のリビング…？
オレはたしか、銃で撃たれた太輔を目の前で見て。
それで太輔はオレに「わたる」って呼びかけた。「守る」とも言った。
いつも夢で見る光景の続きだったけれど…あれは…夢？
それとも…記憶、ってものなんだろうか？
そんな事を考えながら、目だけをゆっくり動かした時だった。
視界の端に、太輔の顔がひょっこりと現れた。
「……たいすけ…？」
「わた！よかった、悪夢から覚めたんだね」
「…あくむ？」
言葉の意味をすぐには理解しきれなくて、疑問系になってしまった。いつもの優しい笑みを浮かべた太輔が、オレの髪を撫でながら、うんと頷く。
「わた、すごくうなされてたんだよ。俺が帰ってきたらリビングもダイニングもまっ暗だし、電気をつけたら、ソファで寝てたわたが苦しそうにうめき出すから心配で心配で」
太輔の眉がハの字に下がって、オレの顔をのぞき込んでくる。その目を見返してぱち、とまばたきをすると、太輔ははあ、とため息を吐いた。
「見たところは異常なさそうで安心したけど…どこか違和感のある場所はない？頭が痛むとか、喉が渇いてるとか、どんな小さな事でも」
「違和感…」
頭痛はないし、手足の痺れもないし、言葉も普通、だと思う。体に関する違和感は今のところゼロだ。でも。
「……わたる」
その響きはオレの頭の中で、即座に「渉」と変換された。航でも恒でもない。渉だった。
もしかしてこれが、オレの名前？
「オレって…渉…？」
太輔の目が、ゆっくりと見開かれた。肉厚の唇が、戸惑いを露にしながら開いていく。
「わた…何か思い出したの…？」
「っ、いや。何も。ただ、さっきの夢で太輔にそう呼ばれた気がして…ただ、それだけなんだけど…」
「……そっか」
太輔の手が、ぽすっとオレの頭に乗った。そのまま、くすぐるように髪を弄られる。
「わたは、わただよ。何も変わらない。これから先も」
その優しすぎる声には、どこかとてつもなく頑丈な扉が見えた。
オレはその先の言葉を忘れて、導かれるように太輔に頷く。
「オレ、は。わた…？」
太輔は、優しく笑い返してくれた。
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風華(プロフ) - 沢歌さん» はじめまして！こちらこそ見つけて読んで下さって、そしてもう一度読んでいただけるなんて本当に嬉しいです…ありがとうございます…！ぜひぜひ、一度目と、真相が分かってからの二度目とを読み比べてみてください(*^^*) (2022年3月12日 20時) (
レス) @page50 id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
沢歌(プロフ) - はじめまして！面白いお話ありがとうございました(*´꒳`*)答え合わせするために再度、最初から読んでみます！ (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 0c2f370c18 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - mi-chanさん» 最後まで読んでくださり、ありがとうございます！そしてイチャイチャの希望もありがとうございます。時期は決まっていませんが、折角恋人同士になったので、何かのタイミングで仲良しさせてあげられたらいいなと思ってます(*^^*)気長にお待ちいただけたら嬉しいです。 (2022年3月9日 16時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
mi-chan(プロフ) - ハッピーエンドで終わって良かったです！絶体絶命のピンチでハラハラしていたので…北山さんが苦手な太輔さんも面白かったです。おまけで太輔さんと渉さんのイチャイチャなどあるといいなと思ってます（笑）ドキドキするお話をありがとうございました！ (2022年3月8日 2時) (レス) @page50 id: fa52f3ba38 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - kumiさん» ようやく結末まで書ききることができました。楽しみだと、面白いと言っていただけて、本当に嬉しくて励みになります。ずっと二人を見守り続けてくださってありがとうございました！ (2022年3月7日 13時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風華
| 作成日時：2021年12月15日 20時
