鞠ここのつ。 ページ9
急遽ブームスラングについて調べていた国木田の携帯が鳴り響いた。
几帳面にフルネームで登録されている番号を見て、慌てて電話に出る。
『太宰 治』。
『やあ国木田君、心配かけて悪かったね。取り敢えず全部丸く収まったから今から帰るよ〜』
「お、お前、大丈夫なのか？」
『怪我一つしてない』
白い手で国木田の携帯をもぎ取ったのは鏡花だった。彼女は珍しく、少しだけ声を荒げて話す。
「太宰さん大丈夫ですか⁉」
『おや、鏡花ちゃんかい？ 私は大丈夫さ。今から帰るよ』
「そうですか……」
ほっと安心したようにため息をついた鏡花の頭を与謝野が撫でる。
敦は賢治と共に太宰の捜索中だ。彼らも呼び戻さねばならない。
「なんだか太宰さん、喜ンでそうですね」
パチンと携帯を閉じた国木田他の探偵社員はやれやれといった顔つきをしている。
普段拉致されたり窮地に陥ったりとした出来事に縁のない太宰だ。気を張っていた者も少なくないだろう。
と、国木田は突然首根っこを掴まれ、隅にずるずると引きずられていった。
「…………太宰の奴、最後になんか言ってなかったかい国木田」
「み、耳ざといですね」
与謝野である。
「すぐあいつらに言わなかったのは、あんたらしくないじゃないか。得体の知れないもんだったからこそ帰ってきてから問い詰める算段だったんだろ？ アタシはそのぐらいお見通しなんだよ何年あんたらの医者やってると思ってんだい」
立て板に水の如く捲したてる与謝野にタジタジの国木田は、早々に白状することにした。
しかし、その一瞬前に、探偵社の扉が開く。
「やあみんな！ 心配かけて済まなかったね！」
そこにはいつも通りの太宰治がいた。
そして_________
「初めまして」
その後ろに引っ付くように隠れている少女がいた。
国木田はわなわなと震え、呟いた。
「預かり物が『人間』だなどと、誰が思うのだクソ太宰………‼」
怒りに震える国木田は、先ほどの携帯越しの会話を反芻した。
『ああそうだ国木田君。ブームスラングのボスからちょっと『預かり物』をしちゃってね〜？
すぐ分かると思うよ。じゃあ後でね』
確かに『すぐ分かった』。
一本取られたということである。
続く
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藤見日和(プロフ) - 竜泉さん» わぁ〜ありがとうございます！ 頑張ります♪♪♪♪♪ (2017年2月4日 0時) (
レス) id: 3600278a3d (このIDを非表示/違反報告)
竜泉(プロフ) - 描写表現が豊かで世界観がよく分かります。 とても面白いと思います、更新頑張ってください！ (2017年2月3日 23時) (レス) id: 388cb5bae8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤見日和 | 作成日時：2017年1月14日 21時
