鞠いつつ。 ページ5
「…………ん、……」
その頃、太宰は。
「…………なんだか、デジャビュを感じさせる風景だなぁ」
石造りの部屋の壁際に転がされていた。
「君たち、私をどうする気なんだい?」
「私は答えない」
一人の男と少女が、荒縄できつく結ばれ、完全に身動きが取れない太宰を見下ろしている。
物言わぬ巨漢とは対照的に肩までの黒髪にお揃いの黒真珠のような瞳が特徴的な、可憐な少女。
白いカッターシャツ、黒いサスペンダーとショートパンツ。
黒と白で彼女の陶磁器のような冷たい美貌を引き立てている。
何時もであればここで間髪入れずに口説き始めている太宰だが、状況が状況だ。
(両太ももにガンホルダー…………ああ、オートマグか。渋いねぇ。ポーチには何が入ってるかわからない、か)
少女までもが武装しているのなら、ここの下級構成員でもなんらかの武装はしていると判断していいだろう。
言うことは聞いておいたほうが良さそうだ。
「あなたは下の護衛に回ってきていいよ」
「了解しました」
20歳にも満たない子供の言うことを聞いて男は扉を開け、出て行った。
がちゃりと施錠する音が聞こえると、少女はその細い足を折り、太宰の顔を覗き込んだ。
「ねぇ、あなた、ポートマフィアの太宰治でしょ」
「……ッ」
なぜ、そんなことを。
息を呑む太宰に、少女は無表情で続ける。
「昔に見たことがある。随分………感じが変わったみたい」
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藤見日和(プロフ) - 竜泉さん» わぁ〜ありがとうございます! 頑張ります♪♪♪♪♪ (2017年2月4日 0時) (レス) id: 3600278a3d (このIDを非表示/違反報告)
竜泉(プロフ) - 描写表現が豊かで世界観がよく分かります。 とても面白いと思います、更新頑張ってください! (2017年2月3日 23時) (レス) id: 388cb5bae8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤見日和 | 作成日時:2017年1月14日 21時