【ワールドトリガー・短編集】藤見日和味。久城墨香風味！

★これだけは忘れさせて【村上鋼】 ※流血注意 ページ4

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『嘘………⁉』
『Aさん、一旦逃げます‼』



愕然とした表情のままのAさんを横抱きにする。



後から分かったことだけど、この新型はベイルアウトを防ぐ為に造られたんだそうだ。



最悪だ。



よりによってAさんが。



なんで、なんでなんで………。



トリオン兵の足は存外早く、追いつかれてしまう。



人を抱えた状態じゃ満足に攻撃ができるはずも無く、もろに攻撃を受けた。



びしり、とヒビが入る音がして、あっけなく換装は解ける。



『くそっ………‼』
『村上、こっち！』




腕から降りたAさんに手を引っ張られて、崩れかけたビルに逃げ込んだ。



トリオン兵はまだ近くをうろついている。



Aさんが口を開いた。




『村上。私が黒トリガーで、倒すよ』



『……は……………？』



Aさんの黒トリガー『明星』。



普通のトリオン体の時でも換装できる代わりに、




生身で起動すると________剣だけ、トリオン体になる。



『何ふざけたこと言ってるんですか、こんな状況……確実に死にますよ⁉ 正気ですか‼』




珍しく激昂した俺に、Aさんはあの笑顔を見せた。





ふわりとした、笑顔。





『村上、私ね、ボーダーで初めて居場所を見つけてから、大事な人の為に死のうと思ってたの』



硬直した俺の頬に、手を添える。



『今がその時なんだ』

『今、って……。！』





唇に、柔い感触。





ドゴオンッ‼


壁を破壊したトリオン兵が、バラバラになって崩れ落ちた。






『え』



同時に、顔に生暖かい飛沫が掛かった。



呆然とした俺の腕の中に、Aさんが倒れこむ。



『A……………さん……？』



『ばいばい、村上。すきだったよ』



血濡れた瞼が完全に閉じて、首がかくりと傾いた。





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俺は獣のように咆哮した。



なんと叫んだのかは憶えてないけど、



脳裏にこびりついた笑顔



Aさんの笑顔だけ憶えていた。



憶えていたって、辛いだけだった。



だって、もう居ないのだ。



肝心の花がないのなら、花瓶なんて要らない。







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お願いだから、






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これだけは____________________

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