episode114 ページ23
ジス:…嘘。
今日はとことんツイていない日だ
運のせいにするのもどうかと思うが、こうも悪いことが続くとついそういう風に考えてしまう
現に病院の一階に設置されているバス停。
病院に来る時と帰る時で違うバスを利用しているが今日は帰りのバスが運休。
確認を怠った僕が悪い
自宅までは1時間ほどかかるが仕方ない。
幸い今日は快晴で雲一つない、散歩がてら歩いて帰ろう
カツカツ…
病院から自宅までは繁華街から距離があり静けさを感じさせる
特に病院から15分ほど歩いた場所にある下り坂は普段は人通りが殆ど無い
…が。
今日はやけに人とすれ違う
それに一人ではなく二人組や親子が目に入る
…そうか
3月下旬ともありピンク一色に染まる坂の見物人ということか
この下り坂はこの時期になると桜が咲き誇り写真スポットだと大学の先輩が写真を見せてきたことがある
僕は写真にも花にも関心がないのでそれほど記憶に残っていなかった
足を進める度に人とすれ違う。やはりバスで帰りたかったと少し後悔した
僕はどちらかといえば春の季節は苦手だと感じる
新しいことを始める時はどうしてもストレスを感じて身体に負担がかかるし、こうやってわざわざ写真を撮るために道を塞ぐ者が多いから
春、に限ったわけでないがタイミングが重なるとどうしても感情に乱れが生じる
花を美しいと思うなんて残酷だ
いつか枯れて散ってしまうことを人間の死と重ねて見る
残酷さの上に成り立つ美しさに酔いしれるこの通行人たちのことを軽蔑する
“ねえ、あの人大丈夫かな”
僕の視線の先から向かってくるカップルの彼女が後ろを振り向き、腕を組む彼氏に向かって言っていた
気にしながらも歩みを止める様子はなかった
ジス:…
人通りが多い中、通行人を避けながら前に進んでいくと
下り坂の途中でうずくまっている女性が目に入った
こんなにも人がいるが誰一人彼女に声をかける様子もなく、僕は駆け足で彼女の元へ駆け寄った
ジス:大丈夫ですか？
しゃがみ込んで視線を合わせるも女性は顔を上げず応答がない
お腹を押さえているので腹が痛いのか
そう察して救急車にかけると、ようやく周りの通行人の人たちも声をかけてくれた
一人で花見に来ていた中年女性が「手伝えることはないか」と聞いてきた
ここでは通行の妨げになるからと彼女を背負い、坂を下り終わった場所にある日陰のバス停まで運んだ
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なっちゃん - とても面白くて一気に読んでしまいました！もう続き出す予定はないですか？ (2022年8月17日 9時) (
レス) id: 9b624f6706 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やっこちゃん
| 作成日時：2021年5月16日 18時
