episode55 ページ10
音楽室に入ると、机が並ぶ方にクラスメイトたちが揃って並んでいた
普段は授業選択者分の机しか並んでいないため半ば窮屈に感じる室内。
彼らの前に用意された台に上り、指揮の役割を担うクラス委員の彼女
端に用意されたグランドピアノにゆっくりと腰を掛ける
ちらりとクラスメイトたちの方を見ると僕の方をじっと見る人物も中にはいた
『…』
同級生たちが口を揃えて難しいと言ったその曲を僕は幼い頃に習得済みだ
だがこうやって誰かとグループで演奏することは初めてだった
僕が鍵盤に触れた合図と共に、指揮者の彼女が曲を開始させた
……
たった3分間の曲だった
だけど僕にとっては凄く長く感じた
一瞬でも油断するとこの感覚を忘れてしまいそうだった
あの頃弾いていた時の余裕など今の僕には全くない
クラスメイトたちの歌声を聞く余裕は正直無い
どちらかと言えば僕が彼らについていくのに必死だ
麻痺して思い通りにいかなかった右手が今こうして動いている
僕にとっては夢のような3分間だった
演奏が終わり鍵盤から指を離すと
歌声とピアノの音が無くなった室内は静けさに包まれた
どういう反応なのか分からず僕はクラスメイトの方を見ることができなかった
パチパチパチ…
�爐垢押次�
�犹箍里Δ遼困譴童�入ってたわ…”
フェードインのように次第に拍手の音が大きくなり室内に広がるその音
僕は忘れていた
人に褒められるのなんていつぶりだろう
これだけ弾けることを当たり前だと言われていた世界にいた
評価されて当然の世界に
こんなにも嬉しいものだとどうして忘れてしまっていたのだろう
涙を流しそうになるのを堪えた
色んな思いが込み上げてくる
真っ暗な暗闇にいた僕がまたピアノを弾ける日が来ることができた
・
だけどそれを許してはくれなかった
母だけは
�燹弔△覆森臂Р颪妊團▲里鮹討い燭痢�”
合唱会が終わったその日の夜だった
食事を済ませて部屋に戻ろうとする僕を呼び止めた
母にはピアノを演奏したことを言ってなかったのにどうして知っているのだろう
明らかに動揺している僕は返事すら出来ずにいると
弟が僕の方を見た
そうだ、弟には伝えていた
今日僕がピアノを演奏することを今朝伝えたんだった
『…弾いたよ。』
箸が止まり、母はゆっくりと僕の方を見た
僕は褒めてもらえると思った
事故からそこまで回復したことを、褒めてもらえると思った
パンッ…
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ジェリー(プロフ) - はじめまして。沢山更新されていたので、久しぶり最初から読み返しました。考えさせられることが沢山あり、泣きそうになりました。更新楽しみに待ってます！ (2021年5月14日 6時) (
レス) id: a4ccdce64b (このIDを非表示/違反報告)
ジンリ(プロフ) - 内容がとっても濃くて、引き込まれて一気読みしてしまいました涙ジュンピと再会、、。みんな幸せになって欲しいです、。更新大変だと思いますが応援してます！！ (2021年5月8日 21時) (レス) id: 2abf938477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やっこちゃん
| 作成日時：2021年4月8日 18時
