episode91 ページ46
―――…
カチッカチッ…
雲一つない空色の下
満開に舞う桜景色の中に一人
風が吹くとふわりと靡く栗色の髪
「ジス、撮るよー」
行き交う人々の中で君がレンズを向ける
僕の名前を呼んで少し離れた場所から指示する
散ることを知らない桜の下にいる僕を写す
カシャッ
撮り終わると画面で確認する君の元へ駆け寄る
君はしっかりしてるけど、何処か危なっかしいところがある
ジス:A、危ないよ
画面に夢中で通行人とぶつかりそうになる君を自分の方へ寄せる
もう付き合って1年以上経つというのに、君は顔を赤らめてわざと視線を逸らす
「見て、ジスかっこよく撮れてるでしょ？」
ジス:本当だ。
そう肯定すると君は顔いっぱいに笑みを浮かべる
どうして僕の彼女はこんなにも可愛いのだろうと周りに自慢したくなる
写真を撮り終わると僕の手を握り、散歩がてら歩き始める
桜道は桜によって殆どが陰となり心地良い
行き交う通行人は連れの恋人や子供と幸せそうだ
「♪〜…」
僕の手を引いて歩く君は鼻唄を歌っている
日本の歌だろうか。僕の知らない曲で歩きながら耳を傾けていた
花の力は偉大だとつくづく思う
一面にこの満開の桜を見れば誰も怒りを表すことはない
…だけど僕は苦手だ
「え！？花苦手なの！？」
この後に立ち寄った“甘味処”という日本風のカフェでこの話をした
“わらび餅”という見たことのないデザートを口にしていた彼女は咽てしまった
「ケホッ…桜見たいって言ったのジスでしょ？だから必死に調べたのに…ありえない。」
あまりに動揺する君が面白くて僕は笑ってしまった
メニューにおすすめと書かれたブレンドコーヒーに喉を通す
ふて腐れたのだろうか。目を細めて僕の方を見る
彼女の実家から電車で1時間以上かけて来たのだから、怒られているのか
ジス:いつかは散ってしまうから美しいと思えるなんて、あまりにも残酷だと思うんだ
花はいつかは枯れてしまう
枯れて無くなってまた新しい花を育てる
大袈裟かもしれないが日々人の死と隣り合わせの現場に実習に行くようになり益々感じるようになった
悲観的で随分とネガティブだと思うが君は話を聞くとなんとなくは納得していた
「ん…？ならどうして桜が見たいなんて言ったのよ」
結局はそうなるか。
…どうしてだろうか
「花を美しいと思える君の姿が好きだからだよ」
自分の意識が遠のいていく中
僕が思い出した最期の思い出だった
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ジェリー(プロフ) - はじめまして。沢山更新されていたので、久しぶり最初から読み返しました。考えさせられることが沢山あり、泣きそうになりました。更新楽しみに待ってます！ (2021年5月14日 6時) (
レス) id: a4ccdce64b (このIDを非表示/違反報告)
ジンリ(プロフ) - 内容がとっても濃くて、引き込まれて一気読みしてしまいました涙ジュンピと再会、、。みんな幸せになって欲しいです、。更新大変だと思いますが応援してます！！ (2021年5月8日 21時) (レス) id: 2abf938477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やっこちゃん
| 作成日時：2021年4月8日 18時
