episode49 ページ4
『…』
ただ天井を見つめるだけの時間が過ぎていく
目覚めて何日経ったんだろう
朝が来て、夜が来てまた朝が来る
時間だけが過ぎていく日々が日常となった
初めての人生だ
こんなにもピアノに触れないのも、何もしない日常も。
お見舞いに来る人などいない
右腕が治るまではこの病院で過ごし、後の経過の様子は中国の病院で診てもらえるとのこと
ここが中国でなくてもお見舞いに来てくれる人などいない
実の弟でさえ、僕が事故に遭ったことを知っているのかすら分からない
母だけが近くのホテルから病院まで通ってくれている
僕には母だけしかなかった
とうに消灯時間を過ぎたのに体内時計が壊れてしまったのか、全く睡魔が襲ってこない
誰もいない一人っきりの病室のベッドの上で硬いギプスをコンコンと叩く
治ってももう前のように演奏出来ない、そう言われた。
僕の腕の話なのに全然実感が湧かない
先生は大袈裟に言ってるだけで、骨がくっ付いたらまた前のように弾けるようになる
また前の日常に戻れる
リハビリをすれば治る、病院はそういう場所だ
ただ運が悪かっただけだ
15歳の僕はそう言い聞かせることでピアニストとしての夢を諦めていなかった
・
・
“こちらはどうだい？”
『痛いです』
“ではこちらは？”
『…痛くないです』
入院して3ヶ月が経つ頃
ギプスから解放された右手
不慣れだった生活がようやく終わると思っていたのに
どうしてだろう
肘から下が無い
感覚が全く無く、床と垂直に宙ぶらりの状態になっている
腕を上げようと思っても力が入らない
どうしてなんだろう
先生が手に触れても何も感じない
左手は温度もかさつきも触感も感じるのに
どうしてしまったのだろう
3ヶ月前、どうせ治ると他人事のように無関心だった僕。
中学生でまだ若いからと粉々だった骨はくっついた
だけど事故の後遺症で神経が麻痺してしまったと言われた
先生が僕の手を放すと床と垂直に宙ぶらりになる
同じだ
事故に遭う前に脳梗塞になった運転手さんみたいだ
泣きわめく母を見ても、まだどこか他人事の僕
感覚のない自分の手がまるで別人の手のようだった
瞬きもせずその手を見つめて乾燥してしまったのか。
涙一つ、僕はこぼれなかった
中国の家に帰ると、僕の日常は日常ではなくなってしまった
�爐�かえり、お兄ちゃん”
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ジェリー(プロフ) - はじめまして。沢山更新されていたので、久しぶり最初から読み返しました。考えさせられることが沢山あり、泣きそうになりました。更新楽しみに待ってます！ (2021年5月14日 6時) (
レス) id: a4ccdce64b (このIDを非表示/違反報告)
ジンリ(プロフ) - 内容がとっても濃くて、引き込まれて一気読みしてしまいました涙ジュンピと再会、、。みんな幸せになって欲しいです、。更新大変だと思いますが応援してます！！ (2021年5月8日 21時) (レス) id: 2abf938477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やっこちゃん
| 作成日時：2021年4月8日 18時
