episode67 ページ22
僕が喋らないことが都合の良いレストランのウエイターたちは暴力を振るうこともあった
無茶苦茶な要望を押し付ける宮野さんに対してのストレスを僕にぶつける
殴っても何も喋らない僕はサンドバッグのようなものだ
一部の人間が暴力を振るっても周りの人間は見て見ぬフリ
誰も止めようともしなかった
『…』
積まれた生ごみの袋の上でぼーっとする
殴られ蹴られて痛むはずなのに、もうよく分からない
一時間いくらで働いているかも知らない
300万円分働けと2年前に言われたが今いくらなんだろう
もうすぐすれば付き人の人が迎えに来てくれる
そしたらまたマンションで宮野さんと過ごす時間が流れる
死ぬまでこの毎日を過ごすんだろうか
起き上がらないといけないのに全然起き上がれない
「…うわ。」
真っ暗な風景の中に写りこんできた
驚いた
その人はさっきの女性だった。
何でこんなところにいるんだと思った
「…大丈夫ですか」
そう声をかけてくれたのは初めてだった
お客さんだって見たことあるはずなんだ、僕がこんな目に遭っているのを
だけど皆関わりたくないから見てみぬフリをする
人は結局自分が可愛いのだと痛いほど実感する
その優しさに救ってほしくて僕は声をかけたんだと思う
気付けばその人は僕の手を取って走っていた
ヒールをカツカツと鳴らして息を切らして走る彼女に僕はただついていった
何度学べばいいんだろう
この人があのお姉さんや宮野さんのように道具として僕を見ているかもしれないのに
必死になって逃げるこの手を僕は離さなかった
この人なら解放してくれると直感で感じた
僕を僕として見てくれると信じて僕は逃げ出した
「中国語って難しいねえ…」
Aちゃんは僕より5つ年上の銀行員の人だった。
平日はいつも朝早く出勤して夜に帰宅する。死んだように床で寝そうになってることもある
休日はできるだけ有意義に過ごしたいそうで一緒に僕の服を買いに行ってくれる
28歳。
付き合っている人はおらず、一緒にレストランにいた人は上司だそう
だけど僕は知っている。
寝室のベッドの隣に置いてあるサイドテーブルの一段目の引き出し
そこに名前が刻まれた指輪を入れている
韓国人のお医者さんと結婚していたが亡くなったそう
外国人の僕に対して抵抗が無いのはきっと海外で生活していたからだと思う
時折思い出して枯れるほど泣くことがある
僕が彼女にしてあげられるのは一人にしないことだった
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ジェリー(プロフ) - はじめまして。沢山更新されていたので、久しぶり最初から読み返しました。考えさせられることが沢山あり、泣きそうになりました。更新楽しみに待ってます！ (2021年5月14日 6時) (
レス) id: a4ccdce64b (このIDを非表示/違反報告)
ジンリ(プロフ) - 内容がとっても濃くて、引き込まれて一気読みしてしまいました涙ジュンピと再会、、。みんな幸せになって欲しいです、。更新大変だと思いますが応援してます！！ (2021年5月8日 21時) (レス) id: 2abf938477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やっこちゃん
| 作成日時：2021年4月8日 18時
