episode65 ページ20
――――…
「……」
宮野:連れ戻したわけじゃないんだよ。ジュンは俺の顔を見るなり自ら戻ってきたんだ
本当だ。
言葉通り、私は何も知らなかったんだ
そりゃ答えるわけがない
こんな人生誰が語りたがるんだよ
宮野:今日のところはお帰り願おうか。僕は「女性」には興味がないもんでね
「…」
何も言い返すことができなかった
関わってはいけない人だったんだ。
この男も、ジュンも
関わらなければこんな緊迫した空気など感じずに済んだ
宮野:ジュンは僕のものだ。これ以上君が何かしようとするならあの銀行の融資を中止してもいいよ。
本当にドラマのようだ
中堅俳優のような風貌をしたこの男が美青年を飼っているなど、どこのサブスクで見れるんだよ
“二度とジュンに近づかないこと”
私が働く銀行に融資をしているのも脅しの種なのだろう
権力は見えないものなのに初めて私に見えた気がした。バチバチに。
ただの一般人に過ぎない私が自分の所有物をかっさらって逃げたのがよほど気に入らなかったんだ
「…分かりました。」
世の中の知ってはいけないことを知ってしまった
この人にとって私は都合が悪い女なんだ
もっと若い頃であればジュンを連れて二人でどこまでも逃げていたかもしれない
だけど私はその逃げた後の末路も措定することのできる歳だ
容易な言葉では表せないほど莫大な権力を持つこの男に私は太刀打ちできない
きっとヤの人にでも頼んで殺されかねない
カツカツ…
田中:あ。先輩、どこ行ってたんですか?
「……ごめん。」
私の席に残されたとうの昔に届いたであろうメインディッシュのお肉。
すっかり冷めきって肉本体にソースが吸収されてまるで食品サンプルのような仕上がりになっている
田中さんはデザートも食べ終わり、ワインを一人で堪能していた
田中:…え、先輩それ食べるんですか?
無言で目の前の食事に手を付ける私を見て目を丸くする彼女。
今まで何をしていたのか聞いてきたが私は黙ってフォークとナイフを動かした
他の客の話し声と店のBGMの中で微かに聞こえるその音
後ろから流れて聞こえるピアノの演奏を聞いたのは初めてここに来た時以来だ
あの日、ただ聞いていたあの演奏にどんな背景があったのか
そんなことも知らずに呑気に聞いていた自分を思い出すと笑えてくる
田中:…え?泣いてます?
「…」
こんな店、来るべきじゃなかった
出会うべきでなかったんだ
彼に
628人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ジェリー(プロフ) - はじめまして。沢山更新されていたので、久しぶり最初から読み返しました。考えさせられることが沢山あり、泣きそうになりました。更新楽しみに待ってます! (2021年5月14日 6時) (レス) id: a4ccdce64b (このIDを非表示/違反報告)
ジンリ(プロフ) - 内容がとっても濃くて、引き込まれて一気読みしてしまいました涙ジュンピと再会、、。みんな幸せになって欲しいです、。更新大変だと思いますが応援してます!! (2021年5月8日 21時) (レス) id: 2abf938477 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やっこちゃん | 作成日時:2021年4月8日 18時