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「さて、いろいろ聞かせてもらおか」
近くにあったベンチに、俺とAちゃんは並んで座った。手には買ってきたばかりの、暖かいココアの缶。
「言いたいことは色々あるけど……まず。なんで、おらんくなったん?」
1番知りたかったこと。何度も考えたけどわからなくて、どうしても聞きたかったこと。
1度消えてしまいそうになったのをなんとか繋ぎとめて捕まえて一緒にいたはずなのに、気付いた時にはもう消え去っていた。
これだけは聞かせてもらわないと、おちおち家に帰れない。
「…こんなこと聞いたら、私のこと嫌いになると思うんですけど」
「ええから、話して」
口ごもるAちゃんに、強めに言い切る。
彼女は躊躇って視線を泳がせた後、観念したのか話し始めた。
.
「あの日…私が最後に学校に行った日。
私の目の前で、中野舞子という人が飛び降りました。
その場にはなくなっていた私物と、2つの封筒が置いてありました。そのうちの1つは私宛てだった、これがその封筒です」
少しよれた封筒が、コートの内側から取り出される。2つに折られたそれの表には、片桐Aと書かれている。
「…いつも持ってるん?」
「…自分への戒めとして」
促されるまま封筒を開くと、中には3つ折りにされたシンプルな便箋。
そこには丁寧な字がびっしりと詰め込まれていた。
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