お金を使わない凄腕メカニックの話 (ページ12)

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お引っ越しページ12

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『え』

「え？」

「なんかねー、今出張メカニックの方が稼げてる節はあるんだよね、俺ほとんどここ来ないし、あげるよ」

いいんすかノリアキさん……！と言える勇気もないのでれんを見つめた。れんもまたボクを見つめた。

「えぇ〜……いいんですか、じゃあ〜………」

「いいよ、あげる」

『お引っ越し、するか』

その日で引っ越しが決まった。

数年間あのガレージでやってきて思い入れはあるが、気持ちの切り替えだろう。

WEASELニュースの記者さんもうちの常連だったので、ニュースにも取り上げられ再びガレージに戻る時には常連がたくさんいた。

ら「よーさぁん、引っ越すんですかー？」

らっだぁさんがバイクを撫でながら寂しげに呟く。

とろろがボクたちに気付いて近付いてくる。

と「どこに引っ越すんですかー？また行きたいです！」

『10071地点かな。ノリアキさんがガレージくれるみたいで』

ら「え〜！？ノリアキさんヤバくね？」

と「あの人車のカスタムしか頭にないから……」

フォローになっているようでなっていないフォローでとろろがノリアキさんを庇い、クハハッと笑う。

フォローになってないじゃん、らっだぁさんがツッコみ、笑いが起こる。

ら「この後どうすんすかー？」

『今日中にこっちのガレージの物全部あっちに運ぼうかなって』

と「えー！？大変じゃないっすかぁ！？」

確かに、車ならどうにかなるが、ガレージが住居と化し過ぎてて、関係ないソファとか冷蔵庫まで置いてあるのだ。

『今トラックでも借りてこようかなって思ってます』

あっちに移動する車の中に荷物を詰め込めば一石二鳥だろう。ガレージのシャッターを開け、普段お客には見せない店の裏側、バックヤードを開放する。

ら「へー、こんな風になってたんだ」

と「え、すげー！無造作に置かれてるのがよーさんっぽいなぁ」

あちらこちら、見てみれば適当に貼られたメモ、無造作に置かれたマニュアル。机の上が舞踏会みたいになってる。ついにはコップまで。

ら「……なんでかき氷シロップ置いてあんの？」

と「え、ほんとだ。しかも開けてあるのに常温じゃん」

主食です、とは口が裂けても言えず。医者であるこの人達にかき氷シロップが主食なんて言ったらお説教を食らうに違いない。絶対追加で定期検診までつけられそう。

『えー？ほんとだ、なんでだろ』