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飲み物と食べ物を与えて、るぅとから一通りの経緯を聞いたころん。
そんな理由だったなんて、と脱力してしまいそうになる。
「……要するに、どっちも騙されてたってことね。サルトゥス公爵家の宰相様に」
はい、と頷いたるぅと。
騙されていたことに気づいたるぅとは、宰相と話をしようとした。
しかし、すべては後の祭りだ。
宰相から完全に敵だと認定され、捕まりそうになったのを命からがら逃げ出してきたのだそうだ。
「少なかった僕の臣下たちも、そこで失いました。追っ手を足止めして僕を逃すために」
だから一人で倒れていたのだ。
しばらく考え込んだころん。
「るぅと様」
「様はいらないです」
「じゃあるぅとくん」
へ、と目を丸くしたるぅと。
「るぅとくん……」
おそらく初めて呼ばれた呼び方だろう。
王族を「くん」呼びする人など、普通いるわけがない。
ころんは気にせずに続ける。
「フレッサ王国に戻ったら、るぅとくんは殺されるかもしれないのね?」
「……はい」
「でも、プラタノ皇国に保護を求めるのも難しいと思う。そこで」
一本指を立てたころん。
「精霊士である僕と一緒に、このヴァルトでとりあえず暮らすのはどう?」
「あなたと?」
思いもよらぬ提案だったらしい。
面食らったような顔をしたるぅと。
「言ったでしょ。シーミア侯爵家は一族処刑になったのに、僕は生きてる。それは精霊士だから。プラタノ皇国でも精霊士は少ないから、少なくともこの国でも僕が殺されることはないの。るぅとくん一人くらいなら僕もどうにかできるし」
ころんの言葉の意味を、るぅとは考える。
精霊士の庇護下にあれば、るぅともある程度安全を確保できる可能性が高い。
精霊士は貴族と同様、それだけで地位が高くなる職業だ。
「でも、ころんさんはいいんですか? だって僕は」
ころんが家族を失うことになったのは、るぅとが原因だ。
そんな人と、なぜ暮らそうとするのか。
「ま、僕にも考えがあるってことよ。どう?」
るぅとくんの損にはならないと思うけど、と続けたころん。
そうは言われても、るぅとには最初から選択肢などない。
「……わかりました。よろしくお願いします」
「じゃ、そういうことで」
とりあえず寝るところと服を確保しないとな、と考え始めたころん。
るぅとはそんなころんを見て、本当にこれでいいのか? とぼんやり考えた。
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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時