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「獣人が差別されることなく暮らせる場所は、トラオム共和国としてすでに存在してる。今まで散々フレッサ王国で差別されてきたのに、俺一人の存在でフレッサ王国に戻ってくると思う?」
苦い顔になった莉犬。
「俺はスキロス家に生まれたから、獣人としてはまだマシだった。それでも嫌な思いはかなりしてきたよ。獣人だからって理由だけで。平民として生まれた獣人たちはどうだったと思う? だって、平民という名の」
そこまで言って、莉犬は言葉に詰まった。
平民とは言うものの、実際の獣人は平民の扱いをされていなかった。
人間よりもかなり下に見られていたのだ。
貴族であった莉犬にも、獣人というだけで似たような目は向けられていた。
スキロス家は伯爵家であったにも関わらず、伯爵家相応の扱いは受けていなかった。
スキロス家は元が男爵家であり、莉犬が生まれたことによって伯爵家になったことも関係はしていたのだろう。
スキロス家の中でも莉犬は有名だったからか、かなり攻撃されていた。
「……俺は、獣人に協力してくれって言えない。俺も他の人にとっては恵まれた場所にいた人なんだ。俺からは何も言えないんだよ」
ころんは黙って莉犬を見る。
莉犬は学園でもかなり攻撃されていた。
伯爵家の出でありながらも、子爵家や男爵家の人間からバカにされている様子を見て、ころんは我慢できなかったのだ。
ころんが莉犬に近づいた理由は、莉犬をバカにしている人たちに何も言えなくするようにするためだった。
ころんは侯爵家の人間であり、伯爵家よりも地位は上である。
そんなころんから莉犬に声をかければ、莉犬も拒むに拒めない。
莉犬をバカにしていた他の伯爵家や子爵家、男爵家の人間も、さすがに侯爵家を敵に回す覚悟はなかったのだろう。
同じ侯爵家の中でも家格が上だった、シーミア侯爵家の人間が莉犬の味方をしたとなれば、他の侯爵家も下手なことは言えない。
公爵家ともなれば、そんな争いなどそもそも気にしていない。
ころんが莉犬に近づき仲良くなったことで、莉犬に対するいじめはなくなったのだ。
莉犬でもこうだったのだ。
普通の獣人なら、どんな生活を送っていたのか。
「……僕は、獣人に対する差別をなくすような国を絶対作りますよ」
るぅとは莉犬を見つめて言った。
「僕は、莉犬みたいな思いをする人がいなくなるような国を作るって約束します」
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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時