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さとみは黙って、地図の上のスローンという文字を見つめている。
「なにかとスローンは重要な場所なんですね」
「みたいだね。スローンの人たちにとってみれば災難でもあるだろうけど」
るぅとところんの会話を聞きながら、莉犬は黙ってさとみを見る。
さとみはスローンの出身だというが、それ以外の情報は何もない。
自分のことを何も話そうとしないのだ。
未だに、さとみが何者なのか莉犬は知らない。
「スローンは精霊の加護を受けてる土地。それはスローン共和国がなくなったあとも変わってない」
そう言って、ころんを見たさとみ。
「精霊士にとってはスローンは動きやすい土地だ。精霊が力を貸してくれやすいし、ころんも全力で思う通りに精霊の力を使えると思う」
スローンには精霊士も結構いるしな、とさとみはまた地図に目を落とした。
「さとみくんは、スローンを拠点にした方がいいと思う?」
しばらく黙って考えていたさとみ。
「ヴァルトよりはマシだろうな。トラオム共和国にも近いから、莉犬も何かと便利なんじゃないか? 獣人たちからも協力を得られるかもしれない」
「え、俺?」
目を丸くした莉犬。
さとみはるぅとの顔を見た。
「るぅとは莉犬のことを信頼してるだろ?」
「はい」
すぐに頷いたるぅと。
「莉犬は獣人だけど。獣人のこと、るぅとは差別するか?」
「まさか。そんなことしませんよ」
あぁ、ところんも納得する。
そういうことか。
「獣人はずっと差別の対象になってた。フレッサ王国でもそうだったし、プラタノ皇国でもそう。莉犬がいたスキロス伯爵家だけが唯一獣人の貴族だったけど、そのスキロス家さえもフレッサ王国は没落させたんだ。獣人からしたらフレッサ王国のことをよく思うわけがない」
でもるぅとはそうじゃない、と肩をすくめたさとみ。
「るぅとは獣人に対して偏見を持ってない。莉犬への接し方を見ててもわかるだろ」
るぅとが王位についたとしたら、フレッサ王国では獣人に対しての意識が変わるだろう。
さすがにすぐには変わらないだろうが、少なくともるぅとは獣人だろうと人間だろうと気にしない人だ。
「……獣人の俺がるぅとくんに重用されていることを知ったら、トラオム共和国にいる獣人たちも俺らの味方をしてくれるかもしれない、ってことをさとみくんは言ってるんだよね」
莉犬は腕を組んだ。
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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時