45. ページ47
「トラオム共和国は獣人の国って言われてるの。るぅとくんには言ってなかったっけ?」
それには莉犬が顔を上げた。
「これ、貴族たちが逃げた先をまとめたからこうなってるけど、俺みたいな獣人の平民は大半がトラオム共和国に行ってる」
「……そうなんですか?」
ころんは黙っていたが、トラオム共和国の首都を指さした。
そこに書かれているのは「アイルーロス」という地名。
「トラオム共和国の公用語はアイルーロス語。アイルーロス語は獣人の言葉だから、人間にとっては難しい言葉なんだよ」
ころんも少し学んだが、分からなくて修得を諦めた言葉だ。
莉犬ですら苦戦していたのだから、人間が話すとなるとやはり難しいのだろう。
「まあ、確かにアイルーロス語は難しいよ。トラオム語も一応あるけど、トラオム共和国は基本的にアイルーロス語って聞くかな」
「そうだね。あとフレッサ王国とは国交がないから、お互いに手を出しにくい。たぶんトラオム共和国は何も動かないと思う」
だからそっちも考えなくていい、ところんは呟く。
地図と名前を見比べてぶつぶつ呟いていたころんは、プラタノ皇国とトラオム共和国、フレッサ王国の国境に指を止めた。
ここは、元々スローン共和国だった場所だ。
「さとみくんって、スローンの出身だったよね?」
「あ? そうだけど、どうかした?」
莉犬が書いた紙を眺めていたさとみ。
「今はスローンはプラタノ皇国の一部だけど、スローンはフレッサ王国ともトラオム共和国とも接してる。それに」
莉犬が地図に書き込んだ文字。
「シエテ公爵家が亡命した先だ」
シエテ、と口の中で呟いたるぅとがハッとする。
「シエテ公爵家って、僕知ってます。僕にスローン語を教えてくれた人たちです」
目を丸くしたころんと莉犬。
「……え、るぅとくんってスローン語話せるの?」
「あれ、僕言ってませんでしたっけ?」
「聞いてないんだけど?」
ごめんなさい、と頭を掻くるぅと。
「前は話せたんですけど、もう長くスローン語は使ってないので……忘れちゃってるかもしれません」
「あぁ、俺もそうだよ。アイルーロス語はちょっと不安かな」
「僕もノヴァ語は不安だな」
三人が日常的に使っているのは、フレッサ語かプラタノ語だ。
三人の嘆きを聞いて、さとみは肩をすくめる。
「いろんな言葉を喋れるってのも大変なんだな」
52人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「すとぷり」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時