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24. ページ26

「莉犬……二日酔い治してくれよ……」

情けなく机に突っ伏しているさとみ。

「治したら家から出てってくれるわけ?」
「たぶんな」

腕を組んでさとみを見ていた莉犬。

ため息をついて、杖を取り出した。

コツン、と杖でさとみの頭を小突く。

「どう?」
「あぁ……ありがとう……」

やっと身体を起こしたさとみは、それでも頭を押さえている。

「バカみたいに酒飲むからそうなるんだよ。いつも言ってるじゃん」
「いや、ほんとすまん」

うー、とうめくさとみを見て、莉犬は呆れて頭を振った。

「にしても、何でさとみくんは二日酔いなんかになるわけ? 俺はなったことないんだけど」
「さあな。莉犬は人間じゃないからじゃん? 獣人って酒に強いやつ多いし」
「いや……さとみくんも人間じゃないでしょ」

はは、とから笑いをしたさとみ。

「わかんね。人間の姿を取りすぎて、本当に人間になっちまったのかもしれないわ」

莉犬はじとっとした目でさとみを見た。

初めて会ったときから、さとみは人間ではない、ということに莉犬は気づいていた。

ころんはどうやら気づいていないらしいが、さとみからは人間のにおいを感じないのだ。

かといって、同じ獣人のにおいがするわけでもない。

例えて言うなら、さとみからは草原や森のようなにおいがする。

ただ、それが何なのかは分からない。

「前から思ってるんだけどさ、さとみくんって何者なの?」
「何者って、俺は俺だよ」

そんな当たり前のことを聞くな、とさとみは肩をすくめる。

「なんか納得いかないんだけど」
「じゃあ逆に聞くけど、俺が何者か言わないことで莉犬に迷惑かけたか?」

ふてくされた莉犬。

「……ないけど」
「だろ? そんな細かいこと気にすんなよ」

人間ではないと分かっているのに、何者なのかはよく分からないもどかしさ。

それなのに気安い性格をしているからか、不気味さはあまり感じない。

ただただ何者なのか分からない人、という印象だ。

しかも、このことはころんには言わないでくれ、と口止めまでされている。

「お尋ね人とかだったら、そりゃ莉犬たちにも迷惑かけるから何者か言うけどさ。そういうのじゃないから安心しろって」

さとみの言葉に、莉犬はため息をつく。

「お尋ね人だったら、何者か言う前にさっさと俺らから離れてほしいところだね。俺らまで目つけられるから」

あと、と家のドアを開ける。

「二日酔い治ったんならさっさと家出ろ」
「……すまん。迷惑かけたわ」

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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時

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