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21. ページ23

ころんはるぅとの手を引いたまま、周囲の人には目もくれずに歩いていく。

いったいどこへ行くのだろう、とるぅとが不安になっていると、ころんはひとつの建物の前で止まった。

「るぅとくんは黙って見てて」

そう言って、ころんは建物の中へと入っていく。

「おばさん、来たよ。ころん」
「あぁ、ころんくん! 助かったよ!」

中にいたのは一人の女性。

るぅとは言われた通り、黙ってころんを見上げる。

この女性が話している言葉はプラタノ語だが、かなり訛りが強い。

それに合わせて、ころんが話すプラタノ語にも訛りが入っていた。

「ん? その子はどうしたんだい?」
「この子? ちょっと預かってるんだ。プラタノ語は苦手みたい」

この訛りは、るぅとには真似ができない。

だからころんは、るぅとが話さずに済むようにこんなことを言ったのだろう。

話す言葉に訛りがあるかどうかで、相手は話している人がどのような地位にいるのか推測できる。

平民が話す言葉と貴族が話す言葉は少し違うのだ。

訛りが何もない貴族が使う言葉を話すと、平民には警戒される。

こういう貧民街なら、警戒どころか敵意を向けられるだろう。

ころんはその点、うまく平民の訛りが入ったプラタノ語を話している。

莉犬やるぅとと話すときにはなかった訛りだ。

そこまで考えて、るぅとはふと気づいた。

そういえば、さとみが話すプラタノ語にも平民の訛りはなかった。

「プラタノ語が苦手って、フレッサ王国からの難民かい?」
「たぶんそうじゃないかな? すんごいカタコトなら喋ってくれるから、覚えてる途中なのかも。ほら、子どもだし。それよりも」

ころんはるぅとのことをうまく誤魔化してくれたようだ。

るぅとは女性が話す言葉を聞き取るだけでも精一杯だ。

会話など到底できない。

ころんが黙って見てて、と言った理由がよく分かる。

「僕に頼みたいことがあるって聞いたんだけど、どうしたの?」
「あ、そうそう! かまどの調子が悪いんだよ、見てくれない?」
「かまど? あー、見てみるよ。どれ?」

こっち、と女性は家の奥へ消えていく。

ころんは行くよ、とるぅとの手を握った。

「このかまどなんだけどね」

ころんは言われたかまどにしゃがみ込んで、中の様子を伺う。

「うまく火が燃えてくれないんだよ。何でなのかわかる?」
「……あぁ本当だ、確かに。でもすぐ直るよ、これ」

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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時

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