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「ごめん、るぅとくん。そんなつもりじゃ」
慌ててしゃがみこんで、るぅとの顔を覗き込んだころん。
るぅとは地面をじっと見て、目を合わせようとしない。
「……僕は、まだフレッサ王国を捨ててなんかない。なのに、ころんさんがそんなこと言ったら……僕はどうしたらいいの」
やってしまった。
ころんは何も言えなくなって俯いた。
「僕は、大好きだったフレッサ王国にまた戻りたい。逃げてしまった国民がみんな戻ってきて、また元通り平和な国にしたい。でも、王国が嫌いになった人がいるのもわかってたけど、だけど」
フレッサ王国のことが嫌いになった人が、こんなに身近にいるとは思わなかったのだろう。
ころんだって、るぅとに伝えるつもりはなかったのだ。
「るぅとくん」
「……はい」
青い瞳で、じっとるぅとの目を見たころん。
「るぅとくんは、いつかは王国に戻りたいんだね?」
るぅともまた、ころんを見つめ返す。
「戻ったら殺されるかもしれないのに、今国にいる人たちには疎まれるかもしれないのに、それでも戻りたいんだね?」
こくり、と頷いたるぅと。
「それは、どうして?」
「……王家に生まれたから。僕が国を捨てるわけにはいかない」
ころんは少し黙って、髪をかきあげた。
「なるほどなあ」
特権階級に生まれたことで果たさなくてはならない義務と、愛国心の問題らしい。
そんなもの、ころんはすでに捨ててしまっている。
ただ、この幼い王弟様はそうでもないようだ。
「それならるぅとくんは、いつかは王国に戻って国王にならなきゃいけない」
「え?」
目を丸くしたるぅと。
「そういうことだよ、今るぅとくんが言ったこと。それは王様にならないとできない」
現在のフレッサ王国の方針は、どう考えてもるぅとが言うようなものではない。
その方針を変えたいならば、自分が変えられるような立場につくしかない。
王族であるるぅとは、その立場につくことができる可能性は十分に残っている。
「それって、また兄上と戦わなきゃいけないってことですか?」
「……それもそうなんだけど」
ジェルが王位についているとはいえ、実際に国を動かしているのは宰相のななもりだ。
そちらをどうにかしない限り、るぅとが王位についても同じことになる。
本気で国を変えたいなら、サルトゥス公爵家を潰さなくてはならない。
ただ、どうやって? という話になるのだ。
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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時