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11. ページ12

だだっ広い王宮の中に暮らしている人数は多くない。

華美な机を前にして、華奢(かしゃ)な椅子に座る。

十四歳のフレッサ王国国王、ジェルだ。

「なーくん、この書類どうしたらいいん? 俺わからへん」

困りきった顔で紙を手に取ったジェル。

隣に立っていた、「なーくん」を見上げた。

「私が処理しましょうか?」
「いいん? お願い」
「かしこまりました」

そう言って頭を下げたのは、この国の宰相であるななもりだった。

サルトゥス公爵家出身のななもりは、幼い頃から秀才として王国に名を轟かせていた。

公爵家にふさわしい人間と言われ、早くから将来は宰相となることを望まれていた。

ジェルの即位とともに、ななもりは国内最年少の三十一歳にして、貴族の頂点である宰相にまで上り詰めた。

温厚で頭の切れる人間だと評されていたが、一方で冷酷な面もある。

宰相になる上で邪魔だったころんの生家、シーミア侯爵家を一族処刑にしたのも、このななもりだったのだ。

敵対する勢力はみな排除する。

それがななもりの考え方だった。

ジェルに任せられた書類を手にして、部屋を出たななもり。

「やはりるぅとは死んでいないか」

ジェルが処理に困って当然だ。

この書類は、ジェルの弟であるるぅとに関する書類だった。

るぅとが逃げた痕跡を追ったものの、森の中へと続いており分からなくなったこと。

念のために周辺を捜索したが、死体は見つかっていないこと。

プラタノ皇国内へ入ってしまった可能性がかなり高いこと。

死んでいないとはいえ、るぅとは十歳だ。

るぅとと一緒に逃げ出した侍女や騎士たちは、すでに皆殺している。

たった一人でプラタノ皇国内へ逃げたとしても、どれだけ生き延びることができるだろうか。

るぅとのことはもう考えなくてもいいだろう。

ただ、一つの心配事の種がある。

「確か、シーミア侯爵家の生き残り……ころんも、このプラタノ皇国へ逃げたんだよな」

るぅともころんと同じような道をたどって、プラタノ皇国に逃げている。

もしかしたら、どこかで二人は出会っていないだろうか。

ころんは確か十八歳になったはずだ。

一人で生活ができていてもおかしくはない。

「そんな可能性は低いと思うけど……もしそうなったら、厄介だな」

唯一殺し損ねたシーミア家のころん。

ななもりは苦い顔をする。

「精霊士だと発覚しなければ殺せていたものを」

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翠霞チサ(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます、とても嬉しいです! (2023年2月15日 3時) (レス) id: 89401d456b (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 本当に好きです、何回読んでも飽きません (2023年2月14日 22時) (レス) id: 0464914362 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - ナナシさん» わああああ!!ありがとうございます!!! (2021年10月4日 21時) (レス) id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - 緋桜ひよ子さん» え、本当ですか!私としてはもちろん大丈夫ですが、本人様たちには迷惑がかからないようにお願いします…! (2021年10月4日 21時) (レス) id: 1f91d52096 (このIDを非表示/違反報告)
緋桜ひよ子(プロフ) - あ…あの!こちらの作品のファンアートを描かせて頂けませんか…!?あまりにも素敵な作品なので・・・・・。ダメであれば大丈夫ですので…! (2021年10月4日 20時) (レス) @page44 id: a44667decb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年9月22日 2時

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