優しくて、暖かくて、心地良かった ページ2
『ひかりがね、ぱあーっとひかったの！』
4歳の誕生日前、個性が発現した。
幼稚園でクラスメートが転んでいたから手を貸したときだった。反射的に目を瞑ってしまうほど眩しい光が放たれ、私は倒れた。
医者は初め、光に関わる個性だと診断付けていた。しかし、個性が発動する時は必ず、誰かを助けるときであった。医者が落としたペンを拾った時、お母さんのバックを持ってきた時……。
そうして、私の個性は
その日の両親は一段と明るく、機嫌が良かった。幼かった私でもその差は十分わかり、少し怖くなった。もしかしたら、ヒーローになれと言うのではないかと思ったからだ。
当時の私はヒーローが嫌いなわけではなかったが、あまり好きではなかった。憧れはあったけれど、同年代の子に比べ、なりたいなと思うことは無かった。
それは私が"痛い"ことが嫌いな、臆病者だったからだ。
だから、私は勇気を振り絞り聞いてみた。
『…ママ、パパ、わたしはヒーローになった方がいーのかな？』
両親は驚いたのか、少し目を見開くと、微笑み私の頭を撫でた。
「Aがやりたいことをやりなさい、なりたいものになりなさい」
撫でられた手の感触は今でも鮮明に覚えている。
優しくて、暖かくて、心地良かった。
その後からは子供らしく個性の発現に喜んだ。
幼稚園では見せびらかし、褒められ、舞い上がっていた。自分がみんなと同じようになれたことが、嬉しかったのだ。
人生が、色とりどりに光り始めたようだった。
そんな日が、ずーっと続くと思っていた。
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作者名：不動 | 作成日時：2021年9月26日 5時
