23.好きだと、思う瞬間 ページ24
「A」
「な、なに…?」
メリオダスが私の名前を呼び、戸惑いながら彼と視線を合わせる。
「お前が自分なりに色々考えて悩んでるっつーことは分かった」
「……メリオダス」
「けどよ、いつまでも悩んでたって仕方ねーだろ。答えなんてすぐには出ねぇ。お前を元の世界に帰す方法も、この世界でやるべきことも、簡単にわかることじゃないしな」
「…うん」
そんな簡単に分かったら、こんなに悩まないし考え込まない。
不安の色を隠せないでいる私とは対称的に、メリオダスは、ニッと笑みを浮かべていた。
「分かるまで、ここにいたらいいさ。今のお前はこの豚の帽子亭の看板娘で尚且つ看板歌姫だからな!」
「歌姫って…」
「それに、オレがお前を死なせねぇ」
その言葉に目を見開いてメリオダス見る。
さっき、私が「弱いからきっとすぐ死んじゃう」って言った時の返事だろうか。
真っ直ぐに見つめて、私を死なせないと力強くハッキリと言葉にするメリオダスに、視界が歪む。油断したらすぐにでも泣いてしまいそうで、私は布団を引っ張って頭まですっぽりと被った。
きっと今、すごく情けない顔してるもん。
「Aはエリザベス以上に泣き虫なんだな!」
「……泣いてない」
「そうかそうか。ならその布団どかしてもいいよな」
「…やだ。駄目」
「頑固な姫さんなこった」
「……メリオダス」
「なんだ?」
どこか優しげな声色のメリオダスに、じんわりと胸が熱くなる。
私は布団で顔を隠したまま続けた。
「私、きっとこれから…いっぱい迷惑かけちゃうよ」
「おう、迷惑上等だぞ」
「……戦えないし、足引っ張るよ」
「それはもう承知済みだから安心しろ」
「………それに私、まだメリオダスに…言えないこと、あるよ」
それは、私が先のことを知っている、という事。
彼らが物語の人物で、私は彼らと出会う前から…彼らを知っている、という事。
まだ言えない。言う勇気がない。どう言えばいいか分からない。言える日が来るのかさえ…分からない。
まだ言えないことがある、そう言った私をどう思ったかな、って心配になって少しだけ布団から顔を覗かせれば、さっきと変わらない笑みを浮かべていたメリオダスと目が合った。
「言いたくねぇことの1つや2つくらいあるもんだろ。お前が言いたくなった時に言ってくれりゃそれでいいさ」
好きだなぁ。
心のなかで、そう呟いた。こういうところが、好きだ。メリオダスの。
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アイル(プロフ) - イメ画可愛いですね!どんなアプリ使ってるんですか? (2018年11月6日 11時) (レス) id: 71579a9d7e (このIDを非表示/違反報告)
きよか。(プロフ) - カナリアさん» 気に入っていただけて嬉しいです(>_<)これからも更新頑張っていきますので楽しみにしてくださればと思います(’-’*)♪ (2018年8月25日 13時) (レス) id: 73661a568b (このIDを非表示/違反報告)
カナリア - これはまったかもしれないですこの作品私気に入りました (2018年8月25日 0時) (レス) id: 207c22caf3 (このIDを非表示/違反報告)
きよか。(プロフ) - ゆら! さん» コメントありがとうございます♪ドキドキしていただけてとても嬉しいです(’-’*)♪ (2018年8月19日 17時) (レス) id: 73661a568b (このIDを非表示/違反報告)
ゆら! - もうドキドキが止まらないですぅ〜。 (2018年8月18日 3時) (レス) id: e1ed62eaa4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きよか。 | 作成日時:2018年6月6日 15時