差し出した手の先は、 ページ8
．
「まって！」
例のモノを探している途中、通路を優雅に歩く照美を見つけて急いで彼を呼び止める。しかし「君も知ってのとおり、わたしはこれから試合があるんだ。君に付き合ってる暇はない」と彼は話しに応じる気はないようで、あの時と同じ冷たい目を向け、僕を避ける。
「あんなので掴んだ勝利は、なんの価値にもならない！」
腕を掴むと、彼は足をやっと止める。安堵したのも束の間、こちらを振り向いた彼の目を恐ろしい程に真っ直ぐだった。
「勝つことに価値がある。
君も総帥のもとにいたんだ。この意味くらいは分かるだろう？」
照美はそれだけを言うと、僕の腕を振り払ってスタジアムに行ってしまった。
「ちがう……ちがうんだよ」
屋外のスタジアムから溢れる光が逆光となり、神々しく照らされた照美の背中を、ただ見つめるしかできない僕は、振り払われて痛む掌をギュッ握る。
「Aちゃん？」
見つめていたところとは逆側の方から聞き覚えのある声。
「鬼瓦さん……？」
「なんだ……理事長さんの言ってた協力者ってのは、Aちゃんのことだったのか」
鬼瓦さんは「よろしく頼むよ」とフッと笑みをこぼした。
＊＊＊
「部屋のロックを頼む」
周りを気にするような小声の会話。物陰に隠れながらそれが聞こえる通路を覗き込む。部屋から出て来た２人の男のうち１人が、グラスを乗せたトレーをスタジアムに運ぶのを隠れながら見届ける。そして部屋の前には男が１人だけになる。
「それって、神のアクア？」
「いつの間に！？」
「ご名答みたいだね」
「くそっ……！」
「……スノーフェンリル」
男が行動に出るよりも前に、そう呟く。すると僕の背丈以上の大きな狼が現れる。
「よろしくね」
僕の隣に歩み寄った狼に優しく声をかけると、狼はどこからか吹く冷たい風に白い毛並みを靡かせて大きく雄叫びをあげる。すると僕に近い床から順に一面が氷に包まれ、瞬く間に辺り一面が幻想的に風変わりし、男も氷に包まれる。
「ありがとう」
狼は表情を変えないまま僕をチラリと見た後、霧のように消えていった。
ーーーーーーーーーーーー
以下に必殺技の解説を書きますね！↓
【スノーフェンリル】ドリブル技
スノー＝雪、フェンリル＝オオカミ(神話)
フェンリルが現れて雄叫びをあげると、辺り一面が氷の世界になる。
メモをそのまま 書きました(笑)
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作者名：ねぐせ | 作成日時：2013年7月31日 16時
