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沈黙が流れる。どちらも言葉を探して、どうすればいいのかを探り合う。私たちの今の関係はまさしくそうだ。自分の思っていることをまっすぐ相手には伝えられない。
「スンチョルさん」
SC「ん?」
まぶたが重たそうな瞳をこちらに向けて、彼は私を見つめる。その弱さに惹かれたのか、優しさに惹かれたのか、もうわからなくなってしまった。
「今日、たくさんの人に謝られたんです。ここに来る前、スングァンさんにもナヨンにも…スンチョルさんにも…」
SC「A…」
「私がはっきりしないから…私が弱いままだから、こうやっていろんな人を傷つけていることにようやく気がつきました」
メンバーに自分の内側を見せないようにすることは、私自身の中にメンバーへの不安と不満を溜め込み、加えてそれを負わせてしまったことにメンバーは罪悪感を覚えさせる。スンチョルさんとの関係をはっきりとさせないことは、私たちのメンバーに対する不安を煽る。さらには、スンチョルさんと私自身に、その曖昧さを保たせる疲れが生まれてしまうのだ。
世間は曖昧さを求めていない。わかりやすさを求める。それは自分のわかる範囲内に全てを押し込めようとする。
「ごまかすのはやめようと思います。スンチョルさんもわかってるでしょう…」
SC「……ごまかすのは苦しいよ。もっと言いたいことがあるのに、もっと近づきたいのにって思うけど…だけど…」
「苦しいなら、そこに執着するのはいけないことかもしれません」
SC「A…、どういうつもり?」
わかりやすい関係にしよう。これ以上周りを巻き込み、傷つけたくない。だからスンチョルさんに言わなきゃいけないことがあるのに。でも、なかなか言葉にならない。
SC「A、オレ、今のままで…」
「もうこれ以上誰かに謝られるのは嫌です…っ」
SC「……」
「…スンチョルさんを傷つけるのは嫌です」
ちゃんと答えを出そうと思ったのは、彼を誰よりも大切にしたいから。この状況が彼を傷つけているのなら、解決しなきゃいけない、向き合わなきゃいけない、そう思ったから。
SC「泣かないで…」
力ない手を伸ばして、私の頬に触れる。涙を優しく拭き取ってくれる。その手は冷たくてひんやりと私の頬の熱を奪っていく。
SC「泣かせたいわけじゃないのに…いつもAの暗い顔ばっかり見てる気がする」
「それは…私も同じです」
すぐにまたスンチョルさんは私の頬から手を離す。
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にこ(プロフ) - 続き待ってます!! (2022年8月8日 20時) (レス) @page43 id: d0206497b3 (このIDを非表示/違反報告)
赤福食べたい(プロフ) - このお話大好きです..!文面にも内容にも、本当に惹かれます。言葉の選び方など、素晴らしくて..素直に感情移入できて、ボロ泣きです(泣)どうか2人にとって良い未来を..無理せず更新頑張ってください! (2022年7月23日 23時) (レス) @page43 id: ae3f32f87f (このIDを非表示/違反報告)
あみだけどうぉぬよんのtastyが忘れられない人(プロフ) - 嬉しいです! (2022年7月18日 12時) (レス) id: 943b446d66 (このIDを非表示/違反報告)
ジェンガ - あみだけどうぉぬよんのtastyが忘れられない人さん» お返事が大変遅くなってしまいました。これから少しずつ書き進めていく予定です。よろしければ、ぜひ続きを読んでくださるとうれしいです! (2022年7月18日 10時) (レス) id: 4a7a083819 (このIDを非表示/違反報告)
あみだけどうぉぬよんのtastyが忘れられない人(プロフ) - 何度も読み返しています。また時間のある時にお話を増やしてくださったら嬉しいです。 (2021年12月14日 11時) (レス) id: 943b446d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ジェンガ x他1人 | 作成日時:2020年5月22日 21時