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移動車の中でナヨンは私に話しかけなかった。ただ、手を握り、一人じゃないよと言ってくれているようだった。病院に着くと、私たちは裏口から入った。彼のマネージャーさんの一人が裏口で待っており、病室へと案内をしてくれる。
病室にたどり着くまでの間、静かな廊下に響く自分たちの足音がやけに耳に響いた。マネージャーさんの足が止まり、個室の病室に着いた。
「さっきまでは起きてたんですけど、今はわからないので一応様子を見てきますね。こちらでお待ちください」
NY「よろしくお願いします」
マネージャーさんは私たちに一礼してから、なるべく音を立てないようにドアを開ける。廊下に残された私たちは深く息を吐いた。
NY「私たちはここで待ってるわね」
「うん…、ありがとう」
NY「時間になったら、ドアを叩くから出てきてね」
わかったとうなずいたところで、またドアが開いた。起きているのでどうぞお入りくださいとマネージャーさんは言い、私のためにドアを開けたままにしてくれた。いってらっしゃいとナヨンは私の背中を押して送り出してくれる。
「こんばんは」
少し暗くなっている病室。外の街頭の光に照らされているスンチョルさんが薄らと見えた。すでに病室のドアは閉まり、私たちだけの空間。
SC「…どうして…Aが…?」
「私が来ること、マネージャーさんから聞いてなかったんですか?」
SC「さっき…聞いたばかりだよ…」
大きな瞳が疲れているように見える。驚きも微かに含めながら、私を見つめる。弱々しいその表情に、胸が痛くなる。
「突然来てしまってごめんなさい」
SC「いや…そういうつもりじゃなくて…っ、とにかく座って」
慌てて近くにある椅子を引き寄せようとするから、「自分でやりますから」とスンチョルさんを止める。疲れているはずなのに、反射的に心遣いを見せようとする彼の優しさに涙が出そうになった。
「今はもう…少しは気分優れましたか?」
SC「うん…点滴を打って少し寝たらだいぶ良くなったよ。ほら、Aと話せるくらいに元気」
「それならよかったです…」
私が笑うと、彼は安心したように微笑み返してくれる。こんなにも優しい。弱っているのは彼なのに、私を座らせようと椅子を準備しようとするところも、私の暗そうな表情を気遣うところも。信じられないくらい彼は優しい。
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にこ(プロフ) - 続き待ってます!! (2022年8月8日 20時) (レス) @page43 id: d0206497b3 (このIDを非表示/違反報告)
赤福食べたい(プロフ) - このお話大好きです..!文面にも内容にも、本当に惹かれます。言葉の選び方など、素晴らしくて..素直に感情移入できて、ボロ泣きです(泣)どうか2人にとって良い未来を..無理せず更新頑張ってください! (2022年7月23日 23時) (レス) @page43 id: ae3f32f87f (このIDを非表示/違反報告)
あみだけどうぉぬよんのtastyが忘れられない人(プロフ) - 嬉しいです! (2022年7月18日 12時) (レス) id: 943b446d66 (このIDを非表示/違反報告)
ジェンガ - あみだけどうぉぬよんのtastyが忘れられない人さん» お返事が大変遅くなってしまいました。これから少しずつ書き進めていく予定です。よろしければ、ぜひ続きを読んでくださるとうれしいです! (2022年7月18日 10時) (レス) id: 4a7a083819 (このIDを非表示/違反報告)
あみだけどうぉぬよんのtastyが忘れられない人(プロフ) - 何度も読み返しています。また時間のある時にお話を増やしてくださったら嬉しいです。 (2021年12月14日 11時) (レス) id: 943b446d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ジェンガ x他1人 | 作成日時:2020年5月22日 21時