▼うんめいだと【主】 ページ26
【A 視点】
キラキラと輝く星を一面に散りばめる宵闇に一等明るく大きな金の天体はきっと"月"というものだろう
『ぼくのかみも、ちゃんとそらのいろなんだ』
ずっと深く被っていたボロボロの帽子をきゅっと両手で掴む
視界が滲んで涙が溢れて嬉しいと思ったのは、今日が初めてだったのだ
…
その日は空がまた一族の色に染まろうとする時間まで、ただ何をするでも無く寝転んでずっとそれを眺めていた
太陽が昇ったと同時にやっとのそりと動き出してから、フューラー家の敷地を跨いで中に入り込むのは造作もなかった
唯一母上様からの贈り物だと父上様から受け取った金色の懐中時計を開くと方位磁針がひたすら北を指してくれたのだ
なんだか呆気なかったな…
居住区であろう城から離れた大きな木の上へと登ってぽけっとただ揺れる草木を見つめていると、1人の男の子がひょこひょこととこちらへ向かって歩いてきた
風に揺れる金色が、宵闇にただ一つ浮かぶあの眩しい月のように思えるほど綺麗なのに
やけに暗い顔をして木の下に座り込んだから、気になってしまったのだ
『こんなとこでなにしてんの？』
思わず口からこぼれた自分の声に肩を跳ねさせ、彼はその髪を揺らせた
そのまま頭を木にぶつけて痛そうに抱える彼に驚いた僕は咄嗟に木の下へと降りる
『だいじようぶかよ…いたくないか？』
僕の心配にきっと顔を向ける彼は少し目に涙を溜めていたけれど、グッと堪えて俺に向いた
「おまえ！ここはフューラーけのしきちなんだぞ？しってるのか？」
その時初めて目の合った双眸は俺に向いてキラキラと光った
俺の一族が誇らしげに語る空というよりも空虚な色とは違う
空からの加護を受けているのは、嗚呼きっと彼なのだと直感した
澄み切った色で此方をキっと睨むその瞳は昨日見た空よりもずっとずっと美しく輝いていた
「おれのなまえはグルッペン、グルッペン・フューラーだ」
その名前を聞いた時、きっと初めておれの心臓が動き出したのだ
ドクン、ドクンと、主人を求めていた遣いとしての心は今や完全に目の前の幼なく年端も行かぬ少年へと真っ直ぐに射抜かれた
『ぼくは"A"っていうんだよ、グルッペンくん』
胸がほんのりと暖かくなる感覚に作り笑顔なんかじゃなくて、僕は初めて心の底から笑顔になれた気がした
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仮想話(プロフ) - 白夜（ハクグン）さん» とても嬉しいお言葉をありがとうございます！上手とは言い難い文章ではありますがこれ程までに褒めてくださり感無量です、最後まで好きに書かせて頂きます〜！ (2020年11月14日 12時) (
レス) id: 4dec9635f2 (このIDを非表示/違反報告)
白夜（ハクグン）(プロフ) - 好きです（唐突）。もうほんと好きです。夢主くんもgさん他のwrさん達もほんと信頼関係…ｯ！無理せずに、無理せずに！頑張ってください！応援してます！！ (2020年11月14日 5時) (レス) id: d2ad143a92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：仮想話 | 作成日時：2020年10月24日 10時
