希望的観測 ページ18
残された軍服に触れると、血の付着した部分は固まってしまっており、ああ洗濯しないといけないじゃないかとそんな日常的な考えが頭に浮かぶと同時にあの日の記憶が蒸し返される
彼の傷は、俺が付けたようなものだ
テキパキとコネシマに指示を出していた彼の事を思い返すと、彼は左腕に響かないように、庇うように振る舞っていたはずだ
しかし、俺を心配させないようにだろう、いつも以上にあの眩しい笑顔を無理に見せていたようにも思う
俺が自分で防ぐ事が出来たなら…という考えと
武器を持たず野心をただつらつらと語りその稽古を殆どしてこなかった事実に頭を抱える
それでも彼は言ったのだ、怪我をした自分を放置して真っ先に俺を確認してから、「いい子」だと、酷く安心してほっと息までついて
普段の書類整理などの業務はきっちりしているくせに、さて戦闘をするぞとなると、トントンのように報・連・相が上手く取れた試しはあまりなく、彼は飄々とその姿をすぐに眩ませてしまう
そして、きっといつも通り予期せぬ手柄やその戦績を評価しろと報酬を強請る事も無く、ただ「こっちの方がいいと思って」と首を傾げてそう言いながらひょっこり帰ってくるのだろう
gr「…本当に、扱いにくい左腕に似つかわしいことこの上ないな
こんな事なら右腕として、その身を常に括り付けてしまえば良かった」
黒のリボンを解こうと向日葵を持ち上げると、それは天寿を全うしたかのようにパラパラと花弁の中心に集まるその種の数々を落とす
その様が、彼の想像もしたくない最後をまざまざと表現しているようで胸の居所の悪さが一気に脳まで駆け抜ける
ああ、どうかその予感が当たらないでくれと祈ることしか出来ない俺は、もう太陽を向く事がない、枯れかけのこの向日葵をどうしても彼に重ねて見てしまう
だから俺は夏が来るたびに、その蒸せる暑さに窓を閉め、一心に咲く向日葵を視界に入れないように必死になっていく
本当は、目を背き続けても彼がここに居ないという事実は変わる事がないのだと、分かっている
どうせその内「ただいま」と馬鹿みたいに何も考えていない顔で笑いながら帰ってくるに違いないのだ
…そんな希望的観測を夢を願う少女のような現実味のない不確かなものを祈る様に
彼を思い出しては首元に下がる揃いのクロスに、無意識に指を絡めてはカーテンの奥を睨むように眺めるだけだ
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仮想話(プロフ) - 白夜（ハクグン）さん» とても嬉しいお言葉をありがとうございます！上手とは言い難い文章ではありますがこれ程までに褒めてくださり感無量です、最後まで好きに書かせて頂きます〜！ (2020年11月14日 12時) (
レス) id: 4dec9635f2 (このIDを非表示/違反報告)
白夜（ハクグン）(プロフ) - 好きです（唐突）。もうほんと好きです。夢主くんもgさん他のwrさん達もほんと信頼関係…ｯ！無理せずに、無理せずに！頑張ってください！応援してます！！ (2020年11月14日 5時) (レス) id: d2ad143a92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：仮想話 | 作成日時：2020年10月24日 10時
