箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ6)

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『馬鹿って、ちょっと』

言い過ぎですよ、と笑う彼と肩を並べて足を投げ出した縁側は、いつの間にか狭くなっていた。
ただ、変わらない目線の高さは、少し嬉しかったように思う。

Puruson「それで？そんなカミングアウトしてまでAがしたいことってなんなの？あ、敬語なしね、堅苦しいから」

『わかりました、あ、ちが…』

Puruson「…まあ、話聞いてたら女装して婚約なんておかしな話だもんね。結婚できる訳ないしそっちの当主様どうなってんの？いくら女しか家系能力引き継がれなかったからと言って例外を許さずに…女の子にしようだなんてよく考えるね」

『あ、それはあたり散らかして怒られてきたところ』

それでソイ様に会って頭冷やしてこいって放り込まれた
なんてけろっとした顔で話す彼がおかしくて吹き出すと、彼はひどく優しい声で続けた。

『ただ、生き方っていっぱいあるんだってことをソイにも教えたくて』

柔らかな風が僕らの間を縫うように優しく頬を撫でながら吹き抜けていく。
ああ、彼は僕とは似た境遇でありながらも、僕の知らない"普通"の暮らしをして…
変わったのではなく、本来の彼が生まれたんだ、と思った。

『当主になったら、僕は一生檻の中で過ごすんだと思う』

Puruson「…確かに、当主になった僕らの生活はじめっぽくて、窮屈で、外に出ることも部下に任せるようになるだろうね。家の人以外に会うのはそれこそAだけかも…ああ、でも結婚、は…」

あれ、でもお父様は「婚約は続行」だって言ってた。
プロフェート家の出入りを見るに、多分Aが本家の外へ出てたんだろう。それから、本当は男だったことがわかって、でも、それで？

『うん、このままだと僕は毎日女体化薬漬け生活。ソイは体は女で効果が切れたら男のヤク中と結婚することになるな』

Puruson「そんっ…！？」

『それをよしとしたのが、うちとそっちの当主だけどね』

婚約解消とならなかったのはそういうことか
当時は知識がないながらに背中に冷たいものが走ったことを覚えている。

詳しい物は実際に見てはいないが、遺伝子に作用するような魔法薬であることは確かだろう。
強力であるほど、心身にかかる負担は大きくなるし、副作用があるものがザラだ。

今考えれば、そんなものを飲み続けたら短命になることなんて目に見えてわかることだ。