箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ39)

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ぎこちない返事でなく、悲しそうな顔でもなく
ただ事実を柔らかく伝えるその姿が年不相応に見えた

Baramu「生徒の安全に関与することなら僕も…」

『あー、いえ、それは大丈夫です』

軽く頭を横に振ると、彼の癖っ毛も同時に揺れる
緩やかで上品な仕草とは裏腹に、下から覗き込むように光る紫水晶の瞳が僕を射抜いた

『 " 僕が " 守りたいんです』

平静に見える薄い笑みとはまるで対照的な、ギラギラと強欲に輝く瞳に照らされれ附に落ちた

Baramu「…あー、なるほど、" 君も " 中々なんだねぇ」

幼馴染くんの話に引っ張られていたけど
この子もこの子で結構依存してるみたい

わざわざ厳しく訓練を積んで技術とセンスを磨き続ける理由はもしかすれば
自分の居場所を奪われない為の自己防衛意識の現れなのかもしれない

『どうされました？バラム先生』

Baramu「んーん、なんでも、僕の認識が至ってなかっただけだよ」

そう言って治らない触り癖(スキンシップ)でその感覚を忘れないように頭を撫でる

慣れた彼は「くすぐったいです」と身をよじり、先ほどまでの欲の根本に触れるようなギラついた感情はどこかへ消えていた

心理学の分野はまだ僕にとっては素人同然だけれど、習ったほうが生徒のためになれるのだろうか

Baramu「もし家の事が嫌になっても、君には逃げる権利がある
悪魔学校は生徒の成長を見守るところだからね、尊重されるのは生徒だよ」

ここで僕が伝えられるのは、これくらいのことだった

彼はその言葉に面食らったように大きな目をさらに開いた後、唸るような声を漏らしながら頭を抱えた

『…そんなに顔に出てました？』

Baramu「ごめんね、ただの予想だったんだけど。君は、家族が苦手なのかい？」

『家族は…お母様とお父様のことは好きです、けれど』

少し目を泳がせて言い澱む彼に「言っていいよ」と促すと、彼は頭を抱えたままだった手を膝の上にのせて綺麗な顔を少し歪ませた

『お母様の実家が少しお堅くて、現当主が祖母にあたる悪魔なのですが…次の当主は僕なんだそうです』

輝かしいはずの継承権を苦々しく口にした彼は、ひどく形容しがたい表情をしながら不格好に笑った

『有難いことなんですが、当主直々の御指名は僕には少々重荷でして』

と、少し遠くを見るように彼の話は続いた
それはまるで独白のようだった