箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ35)

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ra「今の避けるのか！いいなぁオマエ！ますます気に入ったァ！」

背後から耳を刺したその声は異様に溌剌としており、この状況を楽しんでいることは明白だった

rb「魔術(そういうの)もアリなんですか！？」

ra「仕掛けが発動しただけだからノーカンノーカン、対策(そう)しねーと今回の1年は手強いって学んだからな」

ガハハ、と高らかに笑ってごまかす先生

アスレチック師団の顧問たるラッダァ先生には、どのタイミングでどんな仕掛けが飛んでくるか記憶している…ということだろうか

地の利がある分先生が有利か
それでも、遊びならなおさら勝ちたい！

ra「やっぱ俺の目に狂いはなかったなァ…！」

ぬらっとした顔からは想像できないような高揚を見せながら、ラッダァ先生は嬉しそうに笑い続ける
それに呼応するかのように、またトラップが出現する

トラップ、避ける、トラップ、避ける…の繰り返し
先に進みはすれど、順位は入れ替り続ける

一瞬の判断が勝ち負けに直結する感覚機能フル起動のゲームなんて、家庭用ゲームでは中々に得られない

例えるなら、そう、【決闘をしている時】みたいな

全身が鋭利な何かで研ぎ澄まされていくような
空気の流れひとつひとつがまるで息をしているような
【場】全体が何かの生き物みたいな、そんな感じ

何者にもなれるような、何者かにしかなれないような

思考は曖昧で溶けていくのに、感覚だけは鋭敏になっていく

ra「速すぎんぞオメェ…！」

ラッダァ先生のその声が認識できた時
いつの間にか僕は頭ひとつ抜きん出ていて、ゴールもすぐそこに見えてきていた

ra「これならどーだ！」

先生の声に合わせて地面から飛び出してきたトラップはロケットのようなもので
予想してきた位置から予想してきた感覚で顔を出した

予め半身を翻していた僕には当たらず、後ろの方へと速度を上げて遠ざかっていった

だからその後は変わらずゴールを目指すだけ

それだけのはずだった

rb「うおっ…！？」

僕が避けたトラップが向いた先にいるロボロ君がトラップにぶち当たる瞬間までは

ロケット型のトラップはスピードを緩めることなく、ロボロ君の肩にぶつかった

筋肉はあっても小柄な彼はそのまま足場がない場所へと吹っ飛んだ

ロケットの尾を引く飛行機雲

ひどく鈍い音

宙に浮く身体

はためく雑面

ひだまり色の制服

その全てがスロー再生されていくようで
けれど確実に地面に向かって落ちてゆく