56.5.スキ魔 ページ1
.
空虚な瞳で僕を眺める瞳から静かに涙が流れている
その瞳を美しいと感じてしまう僕は、彼にとっては悪なのだろう
ut「…ちょっと優しすぎるんちゃう？」
『だって「嫌わないで」って、目で訴えてきたもん』
ut「…はぁ、悪魔を掌で転がしてなんぼの
そうため息をついて無理に笑おうとする彼に、そばにあったティッシュでそっと涙を拭くように頬に手を沿わせる
『ねえ、覚えてる？ウツが僕を頼ってくれた日のこと』
そう問いかけるとなかなか思い当たらなかったようで、しばらく首を傾げていたウツは、キョロキョロと目線を動かした後で自信がなさそうに僕を見上げた
ut「あの、はじめてキスしてって頼んだ時のことか？」
『そうそう、その時のこと』
あの日のことはいつでも思い出せる
おそらく僕らの分岐点になった、あの時のことは
『あれね、もともと断るつもりだったんだ』
正直に伝えると、ウツはひどく驚いたように目を丸めて、分かりやすく肩を落とした
ut「……そう」
『したくなかったとかじゃなくてね、何かの冗談か…シャオロンに罰ゲームでもさせられてるのかと思って』
ut「……まあ、そう思われても仕方ないか」
『男同士のキスなんて、考えたこともなかったから』
本当は誰よりも考えていたことだった
男同士の婚約を強いられる身として、周囲の普通と比べて、考えすぎて疲れるくらいには
考えた結果、こういうのはおふざけだと思うようになった
そんな悪趣味なことをするのは、嫌がらせや罰ゲームの類だろうと
恋だの愛だのなんて複雑な気持ちはまだ理解できない僕は、自分の秘密がバレることがただ嫌で
だからできる限り明るくふざけて返そうと思ってたのだ
自己保身の為に、そうしようと思ったのに
『でもね、答えようとした瞬間に《
勝手に発動した【
昔はまだ調節が上手くできなくて、でもそんなことには慣れきっていた
でも、あの日の僕には【
その結果を見て、ウツは本当に切羽詰まってるんだって
これは冗談なんかじゃないんだと、信じることを選んだ
『【なんとなく】思っちゃったんだ。これを断っちゃうとウツはもう二度と僕と話してくれないんじゃないかって』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 405人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マジモンの名無し(プロフ) - 仮想話さん» 了解しました！ (1月24日 17時) (
レス) id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
仮想話(プロフ) - お立ち寄り頂きありがとうございます。全てのコメントを有り難く拝見しております。誠に勝手ではありますが、快適かつ楽しいサイト活用の為、当作品でのコメント送信は私宛のもののみに限らせて頂きたいと思います。ご理解ご協力のほどよろしくお願いします。 (1月24日 3時) (レス) id: 4dec9635f2 (このIDを非表示/違反報告)
仮想話(プロフ) - ベルナールさん» ベルナールさん、コメントありがとうございます！不定期ではありますが何年か先の完結目指して更新しますので、お付き合いくださると嬉しいです。 (1月24日 3時) (レス) id: 4dec9635f2 (このIDを非表示/違反報告)
仮想話(プロフ) - マジモンの名無しさん» マジモンの名無しさん、続編でもコメントをいただけるなんて恐縮です！寒い季節が続きますので、温かい飲み物を飲んでゆっくり過ごしますね、ありがとうございます！ (1月24日 3時) (レス) id: 4dec9635f2 (このIDを非表示/違反報告)
仮想話(プロフ) - 蘭欄さん» 蘭欄さん、コメントありがとうございます。趣味ながらできる範囲で研鑽に励もうと思います。ここまでお付き合い下さり本当にありがとうございました。 (1月24日 3時) (レス) id: 4dec9635f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：仮想話 | 作成日時：2024年1月16日 10時
