箸が転べば僕らは笑った -7-【魔d!】 (ページ38)

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syp「…あれ、Aさん？」

昨日のデジャヴを感じながらも、昨日の少年(ちっちゃい子)と一緒ではなく、1人でふらっと屋台を眺めていた彼の名を呼ぶ
俺の呼びかけに気づいた彼は髪をふわりと靡かせながらこちらを見て「おっ」と片手を上げた

『ショッピ先輩、昨日ぶりですね』

見返り美悪魔図

名前に反して特に美人だとは思わなかった絵画の名前がふと浮かぶ
こと現代にすれば、彼こそ【美しい】と評されるに相応しいだろう、と

今さっきまで特殊な美少女と過ごしていたからか、見慣れた美しさを持ちつつも笑顔で駆け寄ってくれるAさんにひどく安心する

そう思えば、なぜか無性に【今】を残しておきたくなって
ほぼ無意識にビデオにのびた手は彼を撮るべくして構えていたらしく、レンズを向けられた彼はさすがに驚いたように目を見開いていた

『え？何でカメラ回してるんですか？』

syp「え、あー…癖なんすよ、嫌でした？」

『…うーん、まあ綺麗に撮ってくれるなら別に』

syp「アンタは何しなくても綺麗に写るでしょ」

『…先輩、そんな殺し文句使えるんですか？』

言われ慣れているのだろう言葉に、彼は「やべー」と笑って返す
シャオロンさんにならサラッと返すのに、なんか変なの

syp「今日もですが、昨日のハナビは特に、なんか凄かったっすよ」

『見ててくれたんですか、ありがとうございます』

へらっと嬉しそうに口を緩める彼に対して、気になっていたことをぶつけようとした

syp「…昨日はあの後『それよりも』

『ショッピ先輩に魔具研に入ったって言いましたっけ？』

syp「…そりゃいっぱいアンタの事知ってる悪魔がおるんで、てか放送されてたし」

『あー、そういえばそうでしたね』

「あの後なんかあったんすか」と聞く前に話題を逸らされた
聞かないでくれ、と訴えられていることは明白だった

あの時にかけられた魔術は特に発動した様子もなく、ハナビが終わればキラキラとした残滓になって消えていった

あれが何だったのか、どんな魔術なのかよくわからなかったけれど
彼の言う通り、俺らに危害を加えるようなものではなかったのだろう

教えてほしくて仕方ないわけではなかったけれど、目の前の後輩がなにを考えているのか少し気になっていたのに
どうやら、教えてくれる気はないようだ