箸が転べば僕らは笑った -7-【魔d!】 (ページ25)

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彼の言葉は心地よくて、一緒にいるだけで自分を好きになれる気がしてくる、不思議と自信が湧いてくるんだ

しかし、彼の表情は口から測れる言葉と違って浮かないもので

『今日は無神経に連れ回してしまって、本当にごめんなさい』

正座をして俺の目を見てから深々と頭を下げる
ぼうっとしていた俺も流石に驚いて、慌てて手を振りながら口を開く

rb「え、ええんよ！？頭あげて！？」

『ごめん、謝ることしかできなくて』

rb「いやそんな、というか俺も…」

rb「あんさんに謝らんと、あかんことが、あって」

ヒュウッと鳴る喉を押さえて、なんとか呼吸をする
深く吸って、息を止めて、ゆっくり吐いて、また止めて
深呼吸を繰り返しながら、雑面越しに不安そうな彼を見る

俺が彼を探していたのは、この言葉を言うためだったから

rb「さっきは、手叩いて、ごめんなさい」

同じように正座をして、同じように深々と頭を下げる
彼からは少し何かに詰まったような、悩んだ声を上げた後に、優しい声色で話してくれた

『ううん、あれは…当然の反応やと思うし大丈夫だよ』

「手もなんともないでしょ？」と俺の方に両手を差し出すので、それを見るため顔を上げた

そっと覗き込んだ彼の手は、いつもと変わらず綺麗だけど…指先が少しだけ荒れていた

手をくるくると回す彼は、裏も表もなんともないでしょ？と言うように眉を八の字に下げて俺を見る
　

安心させようと必死に、自分は大丈夫だと伝えてくれる

そんな彼の手をまじまじと見て、引っ掻き傷や赤みがないことを確認してから、やっと胸を撫で下ろす

rb「傷になってないみたいで、ほんまによかった…」

『心配しすぎだよ、それより自分の怪我を心配してほしいな』

脱力したようにほっと息を吐く彼を見て、俺はウッと息詰まる
促されるままに正座の足を解き、座り直しながら思う

それでも彼の手を振り払ったことで、彼の心を傷つけたことは事実なんだ

それなのに、A君が心配するのは俺のことばかり

他人なのに、他人なんて自分の計画を崩すものとしか思えなかったはずなのに

俺の考え方を変わったのは、きっと

rb「あんさんは、A君は、ちゃんと真正面から俺に関わろうとしてくれるやんか…俺はそれが、ほんまに心の底から嬉しかってん」

『…へ？』

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