箸が転べば僕らは笑った -7-【魔d!】 (ページ21)

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『落ち着いてきた？』

rb「う、ん、ごめんな、もういけそう、やから」

『そっか…なら良かった』

ふわりと温かい目で俺を見る彼を見ると安心する
ドキドキもするけれど、今は何よりも、誰よりも安心する

ぼけっと彼の顔を見たまま鼻をすんすんと鳴らしていると、彼はふと俺の左足に目線を落としたようで、驚いたように声を上げた

『左足赤く腫れてるけど、どうかしたの？』

rb「探すとき飛んでて、壁に当たって、落ちて、そのまま足ひねったっぽい」

『打撲か…見たところ大きな傷はないし変形してないみたいだけど、痛みは？』

rb「動かそうとすると痛い、でもじっとしてるとそんなかな」

『…勉強し始めたばかりの分野だけどさ、ちょっと手当てさせてもらっていい？』

rb「え？う、うん」

俺が頷いたのを見た彼は俺のズボンを少し折って、露出させた患部に向かって両手を添えた

『《治癒促進(トー・フラン)》』

彼の癖っ毛がふわりと浮いて、真面目に意識を集中させていた彼の端正な顔が惜しみなく晒された
俺の左足は暖かな薄緑色の光に包まれて、じゅわじゅわと赤い腫れが引いていく

これは学生が扱える範囲の魔術なんか？
いわゆる高位魔術っていうやつじゃないんか？

緑の光はやがて散りゆき、彼は両手を引っ込めて俺の方に向かって「どうかな？」と小さく口を開く
薄らと額に汗をかいていた彼の顔を見てからゆっくりと左足を動かすと、あの鋭利な痛みは無くなっていた

rb「すごい、ちょっと動かしても痛くない…！」

『成功したみたいでよかった、でもこの魔術はかけてから完治まで暫くかかるからあと1時間は安静にしててね』

rb「い、1時間で治るんか…」

『うん、でもあとでちゃんと教師に見てもらおう』

あの痛みがスッと引いたことと、完治まで1時間という短さに驚いた

確かDクラスの担任ブルシェンコ先生の家系魔術《半永久(ヒール)》は一瞬で傷も壁も治すことができると噂で聞いてはいたけれど、それは家系魔術だからだろう

A君の家系魔術は知らないけれど、この魔術コントロールの的確さには目を見張る

とはいってもあと1時間、歩けるまでは暫く暇になりそうやな

rb「俺は歩けるまでここでおるからさ、A君も用事があるやろうし俺のこと置いて＿」

『え？置いてかんよ？』

そう言い終わるか否か、彼は俺の背と足に腕を回してスッと立ち上がった

…背と足に腕を回されて立ち上がったァァ！？