箸が転べば僕らは笑った -7-【魔d!】 (ページ19)

今日:10 hit、昨日:22 hit、合計:14,991 hit

49.開いた先は【rb】ページ19

【クライン・ロボロ視点】

目の前に迫る隕石を睨みつけて、せめてもと構えをとって魔術を練った

その瞬間だった

「わふん！」

気の抜けた鳴き声と共に暗い空の色に馴染んだ小さな物体が俺に向かって飛んできた

rb「うぷ…っ！？」

避けることもできずドンッと頭に向かってやわらかな衝撃に襲われるも、それほど痛いわけではない

剥がそうと手をやるとモコモコした毛に触れる
なんなら面布越しにペロペロと顔をなめられてる
それに、この気の抜けた鳴き声は…

黒い体毛に手触りの良い黄色の雲のような毛
小さな魔犬のようなそれは嬉しそうに俺を見る

この子には見覚えがある、これはA君の＿＿＿

『《反重力(アンチバリア)》展開ッ！』

凛と響く、男とも女とも取れない力強い声
しかし、何よりも安心する、心地のいい声
どどめ色の空が青々と澄み渡るような、そんなことができるんじゃないかって期待をかけさせてくれる声

俺の眼前に迫っていた岩石は障壁に塞がれ空中へと後退する
それを逃さず大きな漆黒の翼を翻し、シャボン玉のような膜に跳ね返された大岩を回し蹴りで粉砕した
大きな音を立てながらも塵になった隕石のような砂がキラキラと月の光を浴びて風にさらわれていく

宵闇に浮かぶ、大きく強靭な羽を揺らめかせるのは

命の危機に晒されるほどの岩を粉々にしてくれたのは

一度ならずニ度までも、俺を助けてくれたのは

『ほんと、ライラプスが僕のところに来てくれて良かった』

粉々になってなお、降り注ごうとする小石たちに向かって手を差し伸べてフッと軽く息を吹きかけるように魔術を繰り出す

薄紫色の木枯らしは小石たちに降りかかった瞬間に側からボロボロに風化させ、一つ残らずチリになって消えていく
先ほどまで命の危機にも等しくあった脅威が無残に散り行く姿を見てやっと息ができるようになる

俺の胸が、鼓動が、熱く、熱く、早く鳴る

黄金の柔らかな頭髪をサラリと風に靡かせて
クルリと巻いた黒いアモン角が炎の花を背に光る

振り返りこちらを見る紫水晶のような透き通った瞳は俺を捉えると緩やかに弧を描き
滑らかで美しい白い肌から馴染むように薄く色づいた唇が言葉を紡いだ

『おかげでロボロ君のこと、見つけられた…！』

眉を八の字に下げて困ったように、泣きそうな顔でなお心配させまいと笑う、その悪魔を見て肩の力がふっと抜けていく