箸が転べば僕らは笑った -7-【魔d!】 (ページ2)

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『…空気読めるんや、アイツ』

不思議と悪い気はしなかった
むしろ、なんか、なんだろう…スッキリした気分だった

隣で召喚したままだったライラプスが「わふ？」とかわいく声を出して、脛に額を擦り寄せてくる
しゃがみ込んで優しく頭を撫でてやると、嬉しそうに星雲のような尻尾を左右にブンブンと振る

『ねぇ、ライラプス』

「わふぅん？」

『もう一仕事あるんだけど、頼める？』

「わっふ！！」

『ありがとう…あのね』

『ロボロ君のこと、探してきて欲しいんだ』

初めて彼を見たクラスでのこと

諸刑玉砲で練習する彼に声をかけた日のこと

一緒にお菓子を食べたこと

ピアノとフルートでセッションしたこと

アスレチックに一緒に挑戦したこと

そして、さっきまで一緒に露店を回ったことだって

何気ない学校生活が楽しくてワクワクしたのは
楽しい思い出にはいつもロボロ君が隣にいてくれた

まだ彼の顔や表情を見た事もないはずなのに
なんでだろう、思い浮かべるだけでこんなに心が温かくなる

フワフワしてて変な感じ
だけど全然嫌じゃない

『ロボロ君は、僕にとって大切な悪魔(ヒト)なんだ』

僕にとって欠けてはならない悪魔
彼にとっての僕がどうであれ、嫌われているとして

彼がこれから過ごす未来をここでみすみす潰させたりは絶対にしない

僕が彼の一生に関われなくたっていい
彼が僕をどう思っていようといい

ただ、僕の【欲】として、絶対に彼に怪我ひとつ付けさせないから

「わふん！！」

僕の言葉を聞いた使い魔は、どこか嬉しそうにそう声を上げた瞬間に走り去っていった
その使い魔の魔力の残滓を可視化して、後からすぐに飛んでいけるように僕に繋いでおく

屋上にて魔道回路を展開するまでにかかる時間は1.5秒程
その後から探すにはむずかしいけれど、優秀な使い魔が探し当ててくれるだろう

『…《反重力(アンチバリア)》装置、展開』

ｳﾞｩｳｰﾝ、と独特な音が反響し、眼下に広がる広間や生徒たちの上に幕を張る、とは言ってもハナビをちゃんと見てもらえるように不可視のものにしたのだが
膜の一つに拾った石を投げつけてみると、ちゃんとボヨンと返ってくる

これで広間や校舎にいる、端にいない悪魔は怪我を負うことはないだろう