【w.r.w.r.d】赤字ニキは今日も気づかない。 (ページ26)

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実家にしてはあまり古くないのが俺の実家だ。
今の一軒家くらいの見た目で中は普通の家庭より広い。なんでも、もともとの実家の隣に俺が上京してから土地を買って合体させたんだとか。

その金はどこから来るのか不思議でならないが、まぁそういう事情でとっても広い我が家へと歩を進める。
ベランダからは布団がチラチラと見え隠れして、なんだか懐かしかった。

『...ただいまー』

「あら、おかえり。久しぶりやなぁ」

ゆるゆるとした笑顔で迎えてくれたのは母。
本名は伏せておこう、きっと怒るから。母は自分の名前をあまり気に入っていないらしい。むしろコンプレックスだと言っていた。

ゆっくりとドアを開いて入ると、今度は目の前にはしかめっ面で立っている父。
こちらも名前は伏せる。プライバシーの侵害らしい。

「質問に答えろ」

『えっ』

父にしては珍しい低い声に少し驚く。...いやこれ、絶対無理して出してるでしょ。
喉痛めるからやめときなよ。

少し苦笑して返事する。

「ちゃんと答えないと家には入れさせん」

『はいはい...』

「はいは一回！！」

『はい！』

なぜか母にも怒られる始末。理不尽だ、せっかく息子がブラック企業にもかかわらず頑張って帰ってきたというのに。...ブラックとは言ってないから説明もできないけど。

「彼女はいないのか？」

『いません、気になる女性もいないです』

「馬鹿野郎、早く女の一人は連れてこい！意気地なしかお前は。...まぁ、こうなるのはわかっているからこれを準備した」

ごつんと軽く俺に鉄拳をかました父は自分の懐から綺麗な色紙を取り出した。
...これで何度目かわからない嫌な予感がした。

父は玄関先なのにもかかわらずその場でその色紙を開いた。

「この子はいいんじゃないか、お前にぴったりな出で立ちだぞ」

『...』

紛れもなく、お見合いの色紙だった。
そして何よりも俺が注目したのはその名前。

きっちり整えられた字体で書かれた名前は、

【南ことは】。

紛れもなく、彼女だった。

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