【w.r.w.r.d】赤字ニキは今日も気づかない。

Also today 19 ページ20

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『...いやいや、無理だし。今のナシ』

「ええ...」


ぴっと手を前に突き出して無理と示せば、あからさまに村田の顔が歪んだ。
...お前、俺が有給なんかとったらどうなるか知らないだろ。

まず上司に倍の書類が手渡され、明日までに会社宛に送れと言われる。

それに付け加えて後輩からのブーイングも倍に。なんて恐ろしい。
肩をすくませて、ため息をついた。


「ケチやな。俺らはちゃんとこっちきたんに...」

「ホンマやで」

『...あんたら、出張だろ』


俺が遊びに行く、なんてこと無理だって。せめて出張とかない限り＿＿。

そういって頬を掻く。
正直、俺だって遊びに行きたい。なんてったって俺は一応関西出身だ。
上京してからは訛りは一切使わなくなったけど。

...親にも最近は会ってない。


だからごめんな？


そういって顔の前で手を合わせて謝る。
その時。

着信音が俺のスマホから流れ出した。
俺はびくりと肩を揺らして、恐る恐るスマホに手を伸ばした。
...上司からだ。俺の経験上、どことなくいやな予感がした。

このいやな予感は八割方当たる。



上司急遽決まったから伝えておく。明後日にある別の会社との取引の件についてだが、担当が熱を出したらしい。ので、君が行くことになった。明後日から関西に行ってもらう。



会社関係の長々としたメールを眺める。
間抜けな声が出るのをぐっと抑えて、もう一度読んだ。
相変わらず唐突な知らせだった。...確か担当は後輩。

長篠、だったはず。

察した。あいつ、今日の残業とかで倒れたか。
無念。そう思った瞬間、関西という文字に気づいて俺は二人の目の前で勢いよく大声をあげた。



＊

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