Hostage 43 ページ43
＊
併合。
...そうか、併合されたのか。そう言えば、俺は一月眠ってたんだったな。
その間に何が起きたかなんて、知ってるはずもなかった。たとえ、どんなに辛いことが起きても。
表情が曇った俺に、外交官がたたみかける。
「ちなみに、俺らが全部やったんやなくて、色々やったんは君んとこの国民やで。ほんま、不満が溜まってたんやね。不況で不満が溜まりに溜まった国民が革命起こしてたわ」
『不況...そうか』
あの手紙にはそう書いてあったな。それに、革命ということは確実に王は死んだか。
女王はどうだろう。...亡命でもしたか。
さらに表情が曇るのが、自分でもわかった。そんな俺を、変な顔一つせずに真剣な眼差しで見ている二人。...気まずいような、気まずくないような、不思議な空気が満ちる。
「それで、もう一度聞こうか。貴君の国は併合され、今や王政は終わった。もちろん、貴君の一族も殺され、滅びた。...そんな中、貴君はどちらを選ぶ？」
自分の国民も、知らない国民も、全ての国民が見ている中で公開処刑にかけられるか。それとも、身分を全て変えた上で、誰からも忘れられたまま、この国も軍隊に属するか。
結果は明白だと思うんだが。
こちらを睨みつけるような勢いでそう言って見つめる総統。
...そんな風に言われたら、断ろうにも断れないじゃないか。最終手段で、死ぬのは自分の国がいいとか云々と言おうと思っていたけど、それさえも叶わないとは。
あーあ、と呟く。隣では外交官がにっこりと意味ありげな笑みを浮かべた。
『...はいはい、もう逃げ道はないってことですね。いいですよ、軍隊に入ってやります』
「！ 貴君ならそう言ってくれると思っていたゾ！」
『でも、絶対に素性は隠してくれよ。絶対の絶対に、だぞ』
「約束しよう」
それはちょうど、ティータイムは終わって、もう夕刻の時だった。
紅茶はすっかり冷めきって、ただただそのいい匂いを部屋の中に浮かべていた。
...さようなら、A・ファイント。
＊
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作者名：たこやき。 | 作成日時：2018年7月31日 22時
