Hostage 35 ページ35
＊
『でも、もう貴方の暗殺が上手くいかなかったので俺はおとなしく帰るとします。...それでは。人質を疑われぬように、お気をつけて』
「最後まで白々しく振る舞うつもりか。残念だ」
『なんと言われようと構いませんよ、俺は本当のことを言っているまでですから』
不気味に口角を吊り上げて笑う総統に底知れぬ恐ろしさを感じながら、部屋の出口に足を向けた。もちろん、気配も消して。
...行きはよいよい、帰りは怖い。なんてことにならないように。
＿＿いや、もうなっているか。重心を足に加えて、歩き出す。バレない程度に、歩幅を縮めて。
後ろへの警戒を怠らずに。
『...！』
警戒を解くのに、そう時間はかからなかった。なぜなら、俺の待ち望んだその瞬間が驚くほど早く訪れたのだから。
後ろで、総統がため息をひとつ落としてこちらに背を向けた。
それはまるで、無防備に。まるで、俺の攻撃を待ち望むかのように。ふっとそこで俺は慌てて警戒を再開した。なんでか、不思議とあの行動は罠だと思ってしまったから。
また、俺の行動を探ろうとしているのではないか＿＿。
今度こそ、逃がしはしない。そういう気持ちの表れではないのか。
...そう、相手の気持ちを汲み取ってしまった。
『なら...これでどうだ...！』
「ほう？」
だから、俺はあえてその行動の予想外をつこうと、手に持っていた長ドスを振り向きざまに総統へと投げつけた。投げつければ、相手は体制を崩す＿＿そう思った。
そして、その俺の考え通り、総統はほんの少し、動きを鈍らせた。
『＿＿＿＿！』
「いい心がけだな。だが、やはり...甘いな。俺たちを舐めてかかっている」
刹那、目の前で長ドスが弾き飛ばされ、凄まじい勢いで俺の顔のすぐ横の壁へと突き刺さった。声から奇声がこぼれ、部屋に反響する。パラパラと破片が落ちていく中、俺の視界に映ったのは。
「ほんと、グルさんアンタ無茶なことするのやめてくれん...？」
「んふ、なかなかええ線いってるやん？」
『あーー、起きてたんですね。いや、起こされたの間違いか？』
書記長と、特攻隊長。
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作者名：たこやき。 | 作成日時：2018年7月31日 22時
