【赤羽業】変人ストーカー彼女×毒舌不良赤髪

ポジティブ10 ページ12

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それは本当に唐突に。なんの前触れもなく起こった──。

　ビチビチと音を立てて地面で跳ねる黄色い触手。
それを目に小さく『なぁんだ』なんてボヤく彼女。
身の毛が弥立つ感覚に思わず腕を摩った。

視界に映るのはなんの変哲もない対先生ナイフを手で弄んでいるAさんで。それから彼女は警戒を高めているであろう殺せんせーに近付いて、ゆっくりと顔を見上げる。



『私、殺せない先生で殺せんせーって名前になったって聞いたんだけど案外そんな事ないんだねぇ。
もしかしてセンセー、思いの外雑魚だったりする？？』



ナイフを弄びながら殺せんせーを煽る彼女はまるで停学明けのカルマ君の様で。
……まただ。また、僕等を取り囲む様な……下手をしたら息をすると殺されるんじゃないかと言う程の殺気が彼女から溢れ出てる。

　カルマ君でさえ、殺せんせーの触手を破壊したのは最初の一回なのに彼女は一体どうやって殺せんせーの警戒を掻い潜り破壊したのか。疑念と、恐怖に近い感情が蠢いて。バクバクと心臓が早鐘の様に鳴るのが判る。
　そんな中彼女はゆっくりと殺せんせーに近寄り下から見上げるかの様に顔を上げ──……瞬間 彼女を、殺せんせーを
僕等を取り巻く空気が変わった。



『驚かせてごめんねぇ！！！先生がどれだけ過敏なのか測ってみたかったんだぁ』



八重歯を覗かせて軽快に笑うAさんをキッカケに、これまで僕等を、殺せんせーを、殺さんばかりの雰囲気が入れ替わり自然と皆の輪の中に溶け込んで行く。
それを機に「Aすごぉい！」や「お前どうやったんだよー！」等和気藹々と皆とお話しするAさんを目に、また、身の毛が弥立つ感覚。

　彼女は一通り皆とわいわいした後不意に此方を向き『渚ー！見てたーー？！？！』と手を振るもので、思わず肩が跳ねた。

満遍な笑顔で皆の輪を抜け僕の方に来る彼女に、「うん、見てたよ。2回も殺せんせーの触手を破壊するなんて……どうやったの？」と聞けばAさんの表情(かお)が笑顔からキョトン、という表情(かお)に変わる。



『え、簡単だよ？センセーが殺意に敏感なら殺意なく殺したら良いだけじゃん？』



いとも容易いと言う様にあっけらかんとして言ってみせるAさんに、もう何度目かも判らない鳥肌が立った。
それから彼女はなんともなかったかの様に『よーーし！暗殺頑張っちゃうもんねー！』と伸びをしながら言うもので。

　気が付いたら一歩、後退っていた。




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