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喧嘩 Shinjiro side ページ34

あと数日後に迫ったCD購入者限定のバースデーライブ。夏フェスシーズンが終わってからはずっとスタジオに篭もりっきり。



「ここさ、やっぱり変えない?」

「え、いま?」



スタジオでのゲネプロを終えて葵郁が言った一言。ゲネプロは本番通りにやること。だから、微調整はあっても大幅に内容を変更することはあまりない。



「ごめん、ずっと1人で腑に落ちてなくて。通してみたら、やっぱり流れ的に変えた方がいいかなって思っちゃって」

「どういう風に?」



とりあえず話を聞こうと葵郁の意見にみんな耳を傾ける。ああ、葵郁はやっぱりすごい考えてるなって思った。



「そう言うことか、」

「んーどうなんだろ」



1回やってみる?なんて雰囲気になったところで、ずっと黙っていたにっしーが口を開いた。



「俺はこのままでいいと思うけどな」



一瞬にして沈黙が落ちる俺たち。



「だいたい、レッスンのときもリハのときもそれで納得してたんじゃねぇの?今更、納得してないとか。なんでもっと前に言わねぇの?」

「だからそれはごめんって…」

「練習する時間もない、スタッフにも迷惑かける。もし失敗でもしたらお客さんだって不審に思うだろ」



確かにもう時間がない。もう明日には会場でリハなのだから。



「それはそうだけど…時間は私たち次第だよ」

「確かに俺たちはどうにでもできると思う。けどスタッフも色々準備してくれてる。それをお前は台無しにする気か?」

「でも、こっちのほうがお客さん喜んでくれると私は思う」



スタッフ陣は俺たちのやりたいことに対して全力で応えようとしてくれるだろう。それが吉と出るか凶と出るかはわからないけど。



「俺たちだけでライブしてんじゃねえんだ!」

「……わかってる!」



言い合いはヒートアップして語尾が強くなる。葵郁もにっしーも、お客さんや一緒に作ってるスタッフのことを真剣に考えてるからこそ出てくる言葉だ。



「わかってねぇからそんな事言えんだろうが!」

「つ、」

「ワガママなのも大概にしろ!」

「…もういいよ!!」



にっしーの怒鳴り声に葵郁はスタジオを飛び出してしまった。



「ちょっと、葵郁!」

「私たち追いかけてくる!」



女子メンバーが飛び出していく。俺も追いかけようと思って走り出そうとして、一度振り返る。



「にっしー、今のは言い過ぎや。葵郁だって…」

「わかってるよ……」



なんで怒鳴った本人が泣きそうな顔してんねん。

▼→←まるで本当のお姉ちゃん



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作者名:アオイ | 作成日時:2016年10月28日 1時

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