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【mn side】
「いや〜、楽しかった!」
「こんなにいっぱいクイズできることってなかなかないからいいよね〜。大会は誤答が怖くて押せないこともあるし」
まあそこもいいところなんだけど、と笑って言う。目標としていた大きな大会──abcが終わって、ようやく普通の日常が戻って来た気がした。
「それにしても……Aさん、強かったね」
さすが早稲田のクイ研元会長、と言ちゃんが呟く。abc準優勝だしね、と僕も付け足した。
「やっぱ当日は調子悪かったのかな。あの感じだと全然僕より強そうだったけど」
「問ちゃんの調子が良すぎたんじゃない? ほら、なんかあるじゃん。本番パワー」
あーあるねぇ、と相槌を打つ。あの日は随分と運がよかった、と思い返してみても感じる。対する彼女はペーパーの順位が高かったこともあり、脅威になりそうだという予想通り決勝に残った。誤答ペナルティの上限に達したひとりがボタンから手を離したあと、ちらりと横に視線を向けた時に見えた彼女の真剣な表情。これ以上ないくらいに綺麗な横顔。一瞬だけで目に焼きついて離れなくなってしまったことは、言ちゃんにも言っていない。
「もっかい対戦したいね〜、早稲田の人たちも強かったし」
「そうだなぁ、今度は他の人たちが作った問題も押したいかも。言ちゃん、またやるってなったら教えてよ」
「オッケー」
このインカレサークルは基本、東大と早稲田のクイ研会長が話し合って日時を決めている。故に言ちゃんから日程を聞く必要があるのだ。LINEグループとか作ればいいのに、とずっと思っているが、未だに言ったことはない。……あ、Aさんと知り合えたし今度伝えてみるか。
「じゃあまた。動画の撮影ある日に会うかな」
「次の撮影たぶん一緒だしね」
ばいばーい、とそっくりだと何度も言われたふたつの声が重なる。言ちゃんの影を見送って、僕は帰路を歩き始めた。
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鳩麦こおり(プロフ) - 葉華さん» わわ、ほんとですか...! 嬉しすぎるお言葉...! ありがとうございます🥰🥰 (1月23日 17時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
葉華(プロフ) - 面白くて、続きを読む手が止まりませんでした…!素敵な作品をありがとうございます! (1月19日 4時) (レス) id: 799c11267c (このIDを非表示/違反報告)
鳩麦こおり(プロフ) - ジルさん» ありがとうございます〜! ゆるゆる更新ですが完結させられるように頑張りたいと思います💪 (12月31日 22時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
ジル - 更新頑張ってください! (12月31日 21時) (レス) @page5 id: 01b486c023 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2023年12月30日 23時