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「Aさん」
名前を呼ぶ声がゆるゆると震えたことに、私も気づいた。問が私の緊張を感じ取っていた理由が、今ならなんとなくわかる。……きっと、こんな気持ちだったんでしょう?
「僕は……、初めて見た時からずっと、Aさんのことが頭から離れなくて」
やっと、目が合った。揺れる瞳は頼りなくて、でも熱くて、視線はどこまでもまっすぐだった。
「いっぱい、喋ってるうちに、Aさんにどうしようもないくらい惹かれてた」
Aさん。もう何度も呼ばれた名前が鼓膜を揺らす。
「好きです。……付き合って、ください」
世界にふたりだけなんじゃないかと錯覚させられる。耳が痛いほどの静寂と、真っ白な壁に囲まれた空間が、私たちを隔てている。──私には、もうあなたしか見えない。
『……はい』
もちろん、と手を握ると、問はちょっとだけ目を見開いて。それから照れたような、でも満面の笑みをその顔に浮かべた。
汗ばんだ手のひらを、もう離したくないと思ってしまうくらいには、彼は私にとって特別な存在になってしまった。
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鳩麦こおり(プロフ) - 葉華さん» わわ、ほんとですか...! 嬉しすぎるお言葉...! ありがとうございます🥰🥰 (1月23日 17時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
葉華(プロフ) - 面白くて、続きを読む手が止まりませんでした…!素敵な作品をありがとうございます! (1月19日 4時) (レス) id: 799c11267c (このIDを非表示/違反報告)
鳩麦こおり(プロフ) - ジルさん» ありがとうございます〜! ゆるゆる更新ですが完結させられるように頑張りたいと思います💪 (12月31日 22時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
ジル - 更新頑張ってください! (12月31日 21時) (レス) @page5 id: 01b486c023 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2023年12月30日 23時