検索窓
今日:55 hit、昨日:13 hit、合計:20,400 hit

. ページ24

.

 少し、意地悪をしたかった。言葉通りに受け取るなら、伊沢さんに向けている感情と恋愛の『好き』は全くの別物、というだけのこと。でも問のあの言葉、そしてこの表情なら、ほんの少し別の受け取り方にもなり得る。

「……何。気づいてたってこと……?」
『……ちゃんと言ってくれないとわかんないな』

 ニヤニヤと笑うと、問ははあ、とため息をついた。頭をかきながら、だからぁ、と少し投げやりに言う。

「……僕がAさんのこと好きなの、気づいてた?」

 下を向いたまま、だけど相変わらずの赤い顔で問は呟いた。瞳は相変わらず泳いでいて、でも手は握られたまま。温かいその手のひらが愛おしくて、もう一度握り返す。

『……そりゃ、そんなこと言われたら……ね?』

 気づいてほしいが故のわざとだったんじゃないかと思った。そのくらい、今日の問はわかりやすい。拗ねていたのも、思いを口にしたのも。

「……だって、Aさんが伊沢さんと話してる時、すっごい楽しそうだったから」

 ……ごめん。呟いた声が空気に溶ける。斜め下を向いたままの視線は、頑なに私と目を合わせようとしない。耳は相変わらず真っ赤だ。少しだけ髪の毛に隠れたそれは、彼の気持ちを痛いほど正確に教えてくれる。

『あのね、初めて会った時無愛想だったのは、問がabcで負けた相手だったからだよ。だからあんまり関わりたくなかったし、あの日も会っちゃったこと、後悔してた』

 でもね、と続ける。握りしめた手のひらが熱い。ちょっとだけ、彼がこっちを見た。

『問といっぱい話して、問のことたくさん教えてもらって。そうしてたら、もっと問のこと知りたくなっちゃった』


 だからね、もっと、教えて欲しい。


 余裕ぶろうとしていた声は、少しだけ震えた。彼と私の視線は完全に合っている。まっすぐなその瞳が、大きく見開かれた。

「……それ、」
『問。好きだよ』

 彼の瞳を見上げたまま、その言葉は自然に口から零れ落ちた。

 鼓動が痛いくらいに速く、大きく鳴る。問に聞こえていないといいな、なんて取り留めのないことばかり頭に浮かんだ。

 問の視線は地面を彷徨っている。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
142人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , QK , mn
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鳩麦こおり(プロフ) - 葉華さん» わわ、ほんとですか...! 嬉しすぎるお言葉...! ありがとうございます🥰🥰 (1月23日 17時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
葉華(プロフ) - 面白くて、続きを読む手が止まりませんでした…!素敵な作品をありがとうございます! (1月19日 4時) (レス) id: 799c11267c (このIDを非表示/違反報告)
鳩麦こおり(プロフ) - ジルさん» ありがとうございます〜! ゆるゆる更新ですが完結させられるように頑張りたいと思います💪 (12月31日 22時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
ジル - 更新頑張ってください! (12月31日 21時) (レス) @page5 id: 01b486c023 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2023年12月30日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。