【9k-mn】その問いの解答権を

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【your side】

　問は不思議な人だ。雰囲気はゆるっとしているのに物事への向き合い方が嫌になるほどまっすぐで。何を考えているかわからないように見えて、実は誰より人の気持ちを考えていたり、とか。あの場でああやって私を思いやる言葉が出てきたのも、彼のそんな性格からだろうと思う。



　ドアを開けて、リビングに入った瞬間どっと疲れが襲ってきた。自分で思っていたより気を張っていたらしい。結構緊張してたもんな、と思い返す。──いつものクイズ大会とは、違う。誤答しないように慎重に、でも点数を落としすぎないように。押すのを躊躇った問題も多くて、そんな時は決まって問がかっさらっていった。

　問はどうして私が緊張していたことに気づいたんだろう、とまた思った。彼は私をよく見てる。上辺だけじゃなく、心の奥底までも見抜いてくる。──ずるいな。私は問のことを、まだ全然知らないのに。

　問の色んなところに触れていくたびに、もっと彼を知りたくなる。彼の上辺だけじゃなく、全部を知りたい──私はそんな気持ちを知ってしまった。

　問の周囲にいる人たちに嫌われたくなかった。できれば好かれたかった。……そんな気持ちを抱いたのは、どうしてだろう。今までそんなことを気にしたことなんてなかったのに。



　ピロン、と携帯が鳴った。問かな、と直感的に思う。画面を見れば次のクイズ大会の予定が記されていた。会社のみんなも来て欲しいって言ってました、と続けて送られてくる。その言葉に安堵して、肩の力が抜けた。よかった、と真っ先に感じる。そしてそう思う自分にどうして？ と問いかけていた。──答えはもう、わかっている。

　ずっと優勝を目指していた大会で負けた相手。本来なら憎むべき相手に、私は今、どうしようもなく惹かれている。──だって、こんなに他人のことを知りたいと思ったのは、これが初めてだったから。

　あなたを知りたい。もっと近くで、同じものを見て、同じ気持ちを感じていたい。──ああ、もう誤魔化せない。




　私は、問が好きだ。

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