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呆気に取られて顔を上げれば、意外に大きな手が伸びてきて頭を撫でられた。反射的にぎゅうっと目を瞑る。わしゃわしゃとかき混ぜられた髪の毛が、そこだけ熱を持ったみたいに熱かった。どくどくと鳴る心臓の音に気を取られて、しばらく言葉が出てこなくなる。相変わらずのまっすぐな視線は、私の目をしっかり貫いていた。
「言ったでしょ、ここにはクイズ好きな人しかいないんだって。Aさんのこと嫌う人なんていないよ」
にっこりと笑った顔が眩しい。……こんなに明るく笑う人を、私は初めて知った。──綺麗だ。
「……ほら! 今日の優勝者来たよ、Aさん」
「そんな呼び方しなくても」
肩を叩かれて視線を彷徨わせると、苦笑いをしながら近づいてくる長めの前髪が目に入った。山本さんだ。後ろには河村さんもいる。
「……あれ、須貝さんは?」
「トイレ。もうちょっとで戻ってくると思うよ」
愛嬌のある顔は年齢に対してだいぶあどけない。ぱっちりした二重の瞳が私に向く。
「Aさん、お疲れ様。ほんとに強くて楽しかったです」
『あ、いえ……こちらこそ、ほんとに楽しかったし。……あ、優勝おめでとうございます』
遠慮がちに頭を下げると、ありがとう、とふわりとした笑みとともに返された。
「また都合よかったらおいでよ。みんなAさんと押せて楽しそうだったし、Aさんももっとクイズしたいでしょ?」
──その言葉にふわっと背中が軽くなった。……また、来ていいんだ。自然と口元が綻ぶ。彼の後ろを見れば、河村さんもその端正な顔に柔和な笑みを浮かべていた。
『……はい! ありがとうございます』
私のことを受け入れてもらえた。それだけで、私はここに来てよかったと、強く思った。
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鳩麦こおり(プロフ) - 葉華さん» わわ、ほんとですか...! 嬉しすぎるお言葉...! ありがとうございます🥰🥰 (1月23日 17時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
葉華(プロフ) - 面白くて、続きを読む手が止まりませんでした…!素敵な作品をありがとうございます! (1月19日 4時) (レス) id: 799c11267c (このIDを非表示/違反報告)
鳩麦こおり(プロフ) - ジルさん» ありがとうございます〜! ゆるゆる更新ですが完結させられるように頑張りたいと思います💪 (12月31日 22時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
ジル - 更新頑張ってください! (12月31日 21時) (レス) @page5 id: 01b486c023 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2023年12月30日 23時