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【your side】
「Aさん凄いですね」
「ね。さすがはabc準優勝だけある」
きっとこれから一年は、この肩書きを背負っていかなければならない。……嬉しいような悔しいような複雑な気持ちが入り混じる。そんな声があちこちから聞こえてくる中で、私は問の隣に座った。
「お疲れ様。どうだった?」
『んー、楽しかったよ』
みんなガチでやってるしね、と付け足す。今回はだいぶ競り合って、問と私、そして山本さんが上位を争っていた。
『みんなやっぱり強いね。クイズの会社だけあるわ』
「クイズ好きじゃないとこんなの参加しないしね〜。好きなこといっぱいできて、ほんとに楽しいとこだよ」
にこにこと笑顔で話す問は幸せに満ちていて、本当にQuizKnockという場所が好きなのだと、改めて思い知らされる。
『問は?』
「まあ、いつも通りに楽しかったね。……でも」
Aさん、また緊張してたでしょ。そう言われて、思わず息が詰まった。
「見えてるよ。ちょっと震えてた」
……どうしてこの子は、そんなところにまで気づいてしまうのだろう。いつもふわふわした空気を纏っていながら、内面では誰よりも周りを見ている。まっすぐな瞳に胸の内まで全部見透かされてしまいそうで、少しだけ怖くなった。
「……初めて会う人だったから?」
『……違う。そんなのクイズ大会ならいつものこと、』
「じゃあなんで」
その先を言うのが憚られた。彼が見透かすことのできなかった私の心を、自分から見せるのを躊躇っていた。今日はセンター分け。──ああ、綺麗な頬。何も関係のないことを考えていることに気づいてふるりと首を振る。
『……問が。問が好きな人達に、悪く思われたらどうしようって、思ってた』
絞り出すような声だった。……目線は膝。どうしてもあのまっすぐな目を見ることができない。──あなたに本心を見せるのが怖い。あなたはいつでもまっすぐで、綺麗で、私と一緒にいたら何かに染まってしまいそうだから──。
「なんだぁ、そんなこと」
──問は、笑った。
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鳩麦こおり(プロフ) - 葉華さん» わわ、ほんとですか...! 嬉しすぎるお言葉...! ありがとうございます🥰🥰 (1月23日 17時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
葉華(プロフ) - 面白くて、続きを読む手が止まりませんでした…!素敵な作品をありがとうございます! (1月19日 4時) (レス) id: 799c11267c (このIDを非表示/違反報告)
鳩麦こおり(プロフ) - ジルさん» ありがとうございます〜! ゆるゆる更新ですが完結させられるように頑張りたいと思います💪 (12月31日 22時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
ジル - 更新頑張ってください! (12月31日 21時) (レス) @page5 id: 01b486c023 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2023年12月30日 23時