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【mn side】

 どうしてその手が震えていることに気づいたか、なんて。そんなの、ずっと見ていたからに決まっているじゃないか。
 スマホの画面にはAさんの連絡先。……無理を言って追加させてもらった。僕の申し出にちょっと不服そうな顔をした彼女は、それでもスマホを差し出して連絡先を教えてくれた。

『私の連絡先なんて追加して何話すの』
「ん〜……まあ今度また一緒にクイズしましょうよ。日程伝えます」

 QuizKnockの人たちで時々やってるクイズ大会、Aさんも来ます? と聞くと、行っていいならぜひ、と返された。ので、僕は今からお誘いのメッセージを打つ。

「今度のクイズ大会、再来週の土曜に決まりました〜」
「来れそうなら場所送ります」

 打ち込んで送信。画面を閉じると、そのまま僕はベッドに転がった。──あ、そろそろご飯作らなきゃ……何残ってたかな。冷蔵庫の中身を確認するのが億劫で、僕はそのままもう一度スマホの電源を入れた。
 写真をちょっとスクロールすると、abcの時の写真が出てくる。観戦していたみんなが撮って、後で送ってくれたものだ。全景を写したものの中にはAさんが映っているやつもあって、少しどきりとする。どの写真の彼女もすっと背筋が伸びていて格好いい。肩まで伸びた髪の艶まで、僕の記憶から蘇る。──あの時。たった1秒にも満たないくらい、見つめただけなのに。

(……罪な人だなぁ)

 クイズが好き。そうやって繋がった人に、こんなに強く、惹かれてしまうなんて。
 彼女は綺麗だ。その外貌も、クイズへの想いも、生き様も。側にいたい、と思うほどに、彼女との違いを知らされるようで胸が痛くなる。あなたの隣を歩きたい──そう思うたびに、僕はAさんが好きなんだと強く自覚させられる。


 ピロン


 通知音が耳元から聞こえてきて、持っていたスマホを起こす。トーク画面を開くと、OKの返事が表示されていた。

「……Aさん」

 呟いた声が空に溶ける。靄がかかったような頭の中で彼女の声を反芻した。──ああ。名前、呼んでほしいな。





 早く、あなたに会いたい。

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鳩麦こおり(プロフ) - 葉華さん» わわ、ほんとですか...! 嬉しすぎるお言葉...! ありがとうございます🥰🥰 (1月23日 17時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
葉華(プロフ) - 面白くて、続きを読む手が止まりませんでした…!素敵な作品をありがとうございます! (1月19日 4時) (レス) id: 799c11267c (このIDを非表示/違反報告)
鳩麦こおり(プロフ) - ジルさん» ありがとうございます〜! ゆるゆる更新ですが完結させられるように頑張りたいと思います💪 (12月31日 22時) (レス) id: e6ac31a148 (このIDを非表示/違反報告)
ジル - 更新頑張ってください! (12月31日 21時) (レス) @page5 id: 01b486c023 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2023年12月30日 23時

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